映画【ブラックライダー(1986)】感想(ネタバレ):スーパーカーとカセットテープを巡る壮大なチェイス劇

Black Moon Rising
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●こんなお話

 フリーランスで国から裏仕事を請け負う主人公が車を大会社から盗もうとする話。

●感想

 主人公がコンビニにいるところから物語は始まります。突然現れた拳銃強盗を、まるで遊んでいるかのように軽々とかわしてしまう主人公の余裕に、思わず引き込まれます。その後、脱税容疑で追われる企業の施設に忍び込み、警備員の追跡を巧みにかわしながら重要な証拠であるカセットテープを盗み出すシーンが続きます。緊張感あふれる逃走劇の中で、主人公のスキルの高さが光ります。

 一方、広大な砂漠では高速スーパーカーのテストが行われており、ドライバーや科学者たちが実験の成功に歓喜しています。この映像はまるで未来のテクノロジーを垣間見るようで、映画に独特のスリルと華やかさを加えています。主人公の車はチェイスの影響でボロボロになってしまい、そこで運送中のスーパーカーと科学者たちと遭遇。主人公はこのスーパーカーにカセットテープを隠し、再び追手の警備員から巧妙に逃走するのです。

 その後、華やかなパーティー会場でスーパーカーのお披露目が行われますが、ヒロインが大胆にもそのスーパーカーを盗み出し、逃走を開始します。主人公は彼女の後を追い、スーパーカーが向かった先のビルに潜入します。このビルは数々の盗まれた車が集められた秘密の倉庫であり、設計者でもある主人公の知り合いから要塞のように堅固な構造であることを知らされます。

 ヒロインとカタキ役との関係がぎくしゃくしていることを主人公が尾行によって知り、その直後に急速に深い関係になっていく様子は、観ているこちらも驚かされます。やがて、ビルに忍び込もうとした科学者やドライバーの仲間が警備員に殺害され、主人公自身も激しい攻撃を受けてボロボロに。そこでヒロインの家に避難し、二人でビルへの侵入計画を練り直します。

 ビルの設計図を基に、上層部からと下層部からの二手に分かれて侵入する計画が進みます。しかし、ヒロインは敵に捕らえられてしまい、監禁されることに。主人公は屋上から密かに侵入し、ダクトを伝ってヒロインのもとへたどり着き、二人は再び力を合わせて戦い抜く決意を固めます。

 最終決戦では、主人公がスーパーカーに乗り込み、立ちはだかるカタキ役を轢き飛ばしながら隣のビルへと飛び移る大胆なアクションを披露。隣のビル内で警備員と壮絶な殴り合いを繰り広げ、最後は政府関係者にカセットテープを手渡して物語はおしまい。

 この映画の魅力のひとつは、コンピューターや監視カメラがひしめく近未来的な部屋の美術セットや、様々なモニターが並ぶスーパーカーの内部の細部に至るまでの緻密な作り込みにあります。視覚的な楽しさが随所に散りばめられており、観客を飽きさせません。

 ただし、チームプレイの描写がやや弱く、仲間たちが急に協力する展開は唐突に感じられ、クライマックスの要塞への侵入シーンにおいても、侵入困難なはずのビルが思いのほか簡単に突破されてしまう印象が強かったのは残念な点です。監視カメラの操作もあっさり過ぎて、緊張感が薄れてしまったのは惜しいところでした。

 また、ヒロインとの関係が急速に深まるのも物語のスピード感を助長していますが、あまりにも唐突で、感情の積み重ねが足りずに驚きを禁じ得ません。全体としては派手なアクションと豪華なビジュアルに満ちた作品ですが、もう少し人間関係や緊迫感を丁寧に描いてほしかったと感じる部分もありました。

☆☆☆

鑑賞日:2023/07/19 U-NEXT

監督ハーレー・コックリス 
脚本ジョン・カーペンター 
デズモンド・ナカノ 
ウィリアム・グレイ 
原案ジョン・カーペンター 
出演トミー・リー・ジョーンズ 
リンダ・ハミルトン 
ロバート・ヴォーン 
リチャード・ジャッケル 
リー・ヴィング 
ババ・スミス 
ダン・ショア 
キーナン・ウィン 
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