●こんなお話
兄との関係のこじれや高齢者の集団訴訟の顛末、マイクはどんどんとダークなビジネスに足を突っ込んで行くシーズン。
●感想
台詞を極力排した演出で、人物たちの行動によって物語を語っていくという手法が今回も見事に機能していました。開始直後から、「これは何をしているのだろう?」と観る者に疑問を抱かせながらも、静かに引き込んでいく導入。物語の後半で、最初の行動の意味が明かされる構成には唸らされました。ひとつのドラマシリーズでありながら、一本の映画のような静かな緊張感と洗練された演出が積み重なっていくスタイルは、今シーズンでも健在でした。
主人公を取り巻く危機は常に新たなかたちで現れ、今回もまた兄との確執による弁護士資格のはく奪の危機が中心に描かれていきます。どこまでいっても冷徹に、計算高く、そして時に感情をあらわにしながら自分の立場を守ろうとする主人公の姿に、毎回ハラハラさせられます。そしてその逆境から、予想もしないかたちで形勢を逆転していく展開が実に痛快です。見せ場のひとつひとつにきちんとカタルシスが込められており、視聴後の満足感が高いのもこのシリーズの特徴です。
ハンクが無言で仕事を遂行していく姿も、今回の見どころの一つでした。派手さはなく、ただ黙々と目の前の仕事をこなしていくその姿には、どこか不気味な迫力すら感じさせます。そしてその無言の仕事ぶりが物語の流れをさりげなく、しかし確実に変えていくという構成も面白さを増しています。
さらには、『ブレイキング・バッド』からのキャラクターが再登場する場面もファンにはたまらないシーンでした。ほんの一瞬、店の背後にぼんやりとピントの外に映るだけで強烈な存在感を放ち、彼が再びこの物語に関わってくる期待をぐっと高めてくれます。敵対組織との火花を散らすようなやりとりも含めて、シリーズの歴史を引き継ぎながら広がっていく構成の巧みさには驚かされます。
チャックを演じるマイケル・マッキーンさんの法廷シーンも圧巻でした。はじめは冷静に淡々と証言を進めていくものの、主人公の仕掛けにより次第に理性を失っていく姿の変化が素晴らしく、俳優としての実力が強く印象に残る場面でした。そこに至るまでの積み重ねが丁寧で、映像表現と演技の力が噛み合った名場面と言えます。
また、ナチョの葛藤もこのシーズンでは大きな見どころの一つとなっていました。自分のビジネスに家族を巻き込みたくないという思いから、サラマンカ一派のボスに対して取る行動が何ともスリリングで、彼の選択がどんな結果をもたらすのかが常に緊張感を保ち続けていました。
主人公と兄との確執が頂点に達し、金策に奔走しながら、同時にマイクの裏社会での立ち回りも描かれていく。この複数の視点が綺麗に絡み合い、サラマンカ家の内部抗争や組織内での信頼と疑念の綱引きがリアルに描かれていました。全体を通して、細やかな描写と抜群の構成力で、ひとつひとつのドラマが丁寧に積み上げられていく。シリーズを重ねても、なおクオリティの高さを維持した見応えのあるシーズンとなっていました。
☆☆☆☆☆
鑑賞日:2020/04/16 NETFLIX
製作総指揮 | ヴィンス・ギリガン |
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ピーター・グールド |
出演 | ボブ・オデンカーク |
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ジョナサン・バンクス | |
レイ・シーホーン | |
マイケル・マンドゥ | |
パトリック・ファビアン | |
ケン・ハワード | |
マイケル・マッキーン |