●こんなお話
家具店の地下に現れた出口のない黄色い迷宮に迷い込んだ男と、彼を捜しに来た女性が怪物と遭遇する不条理な話。
詳細ネタバレあらすじ
1990年代、家具店を経営するクラークは、妻と離婚し、経営が悪化した店で働いている。かつて建築家を目指していたクラークは、現在は店の地下室で酒を飲みながら生活している。セラピストのメアリーはクラークのカウンセリングを担当し、面談ではクラークに過去の結婚生活を語らせ、元妻とのやり取りを再現するロールプレイを行っている。
ある日、クラークは家具店の地下室で壁の一部を通り抜け、見知らぬ空間に入り込む。そこには黄色い壁紙が貼られた部屋が広がり、蛍光灯が天井に並んでいる。部屋と廊下は複雑につながり、どこまでも続いているように見える。クラークは内部を調べ、壁や通路の配置を記録しながら探索を進める。
クラークは異空間の存在をメアリーに伝え、内部の様子を説明する。メアリーはカウンセリングの中でクラークの話を聞き、彼が発見した場所について尋ねる。
クラークは店の従業員であるボビーと、ボビーの恋人であるキャットにも異空間を見せる。ボビーはビデオカメラを持ち込み、内部の様子を撮影する。3人は黄色い部屋や長い廊下を進み、異空間の構造を記録していく。探索中には、人間とは異なる姿をした存在も現れる。3人は内部で危険に遭遇し、ボビーとキャットの行方が分からなくなる。
クラークはその後も異空間の探索を続けるが、やがて現実世界へ戻ることができなくなる。内部には家具店に似た空間や、現実の建物を模した部屋が現れる。クラークは家具を運び込み、内部に居場所を作って生活を始める。異空間で過ごす時間が長くなるにつれて、クラークは現実世界との接点を失っていく。
クラークの失踪を受け、メアリーは家具店を訪れる。地下室を調べたメアリーは、クラークが話していた異空間への入口を発見する。メアリーはクラークを捜すため、壁の向こうへ足を踏み入れる。
メアリーが進んだ先には、黄色い壁紙の部屋と長い廊下が続いていた。通路は複雑に入り組み、同じような部屋が何度も現れる。メアリーは出口を探しながら、クラークの痕跡を追って異空間の奥へ進んでいく。
探索の途中、メアリーは現実世界の建物を模した場所や、人間の姿に似た存在に遭遇する。異空間には、人間や実在する場所を不完全に再現した存在が現れ、メアリーはそれらを目撃しながら、クラークの居場所を探し続ける。
メアリーの過去も、異空間での探索と並行して描かれる。幼少期のメアリーは母親と暮らしていたが、母親によって家の外へ出ることを制限されていた。母親は窓を新聞紙で覆い、メアリーが外の世界を見ることを妨げていた。メアリーは家から出ようとした際、コンクリートに手形を残している。
メアリーは異空間の中で、幼少期の自宅を思わせる場所や、過去の記憶に結びつく空間に遭遇する。そこには現実の家と似た構造がある一方、細部が異なる部分も存在している。メアリーは幼少期の家に関係するコンクリート片を持ち歩きながら、さらに奥へ進む。
やがてメアリーは、異空間の奥でクラークを発見する。クラークは内部に家具を置き、生活できる場所を作っていた。メアリーはクラークに現実世界へ戻るよう促すが、クラークは異空間で生活を続けようとする。
クラークはメアリーを食卓のある部屋へ連れていく。そこには人間の姿をした人型の存在のスティル・ライフが並んでおり、クラークはメアリーにセラピーの続きを行わせる。クラークは過去の結婚生活を再現するため、メアリーに元妻の役を演じさせる。食卓を囲む人物たちは、クラークの記憶をもとに再現された存在として配置されている。
メアリーは、彼を現実世界へ連れ戻そうとする。しかし、クラークは異空間での生活を続けることを選び、メアリーをその場にとどめる。
そのとき、海賊の衣装を着た巨大な怪物が部屋に現れる。怪物はクラークが経営する家具店の広告に登場する海賊姿のマスコットに似ている。怪物はクラークに襲いかかり、首にかみついて殺害する。
メアリーは怪物から逃げ出し、バックルームズの廊下を走る。怪物はメアリーを追いかけ、彼女は部屋や通路を抜けながら逃走を続ける。やがてメアリーは、クラークの家具店を模した空間にたどり着く。そこは現実の店舗に似ているものの、細部が異なる異空間内の再現された場所だった。
メアリーは持っていたコンクリート片を使い、追ってきた怪物に抵抗する。そのコンクリート片は、幼少期に自宅の外で手形を残した場所に関係する物だった。怪物がメアリーに迫る中、異空間に設置されていたエイシンクのガストラップが作動し、室内にガスが放出される。怪物はガスによって動きを止められる。
防護服を着用したエイシンクの研究員たちがメアリーの前に現れてメアリーを保護し、バックルームズの外に設けられた研究施設へ連れていく。
研究施設でメアリーは、エイシンクの研究員フィルから事情を聞かれる。エイシンクは異空間を調査している組織であり、研究員たちはバックルームズの構造や内部で発生する現象を調べている。フィルはメアリーに、異空間で何を見たのか、どのような経緯で内部に入ったのかを質問する。
メアリーは自分がクラークを捜して異空間へ入ったことや、内部で遭遇した出来事について説明する。フィルは調査のために質問を続けるが、メアリーが今後どのように扱われるのかについては、自分には決定権がないと伝える。
研究施設で事情聴取を受けるメアリーと、バックルームズ内に現れたメアリーの複製が示され、物語はおしまい。
●感想
何もない空間や、家具も人もいない部屋に特別な恐怖や違和感を覚えない自分にとって、黄色い壁紙の部屋が延々と続く光景は、あまり印象に残りませんでした。蛍光灯が並ぶ天井や、同じような廊下がどこまでも続く映像が繰り返されますが、そこに恐怖を感じることができず、序盤から退屈でした。
家具店の地下室から異空間へ入り込み、出口の分からない場所を探索するという設定は興味深いです。ただ、黄色い部屋や長い廊下が続く場面が中心となるため、映像の変化が乏しく感じられました。何かが起こりそうな雰囲気を長く見せられても、空っぽの空間そのものに不気味さを感じないので、なかなか物語に入り込めませんでした。
後半になって怪物が登場すると、ようやく展開に動きが出てきます。人間の姿とは異なる怪物がクラークを襲い、メアリーを追いかける場面は、それまでの静かな探索とは違ったホラー映画らしい展開です。ただ、怪物の動きはゆっくりとしていて、追跡場面にもそれほど新鮮さはありませんでした。怪物が迫ってくる映像も、私には緊張感よりも展開の遅さが気になってしまいました。
クラークとメアリーの関係をセラピーという形で描き、異空間の構造や人間の複製を登場させるなど、物語には心理的な要素も含まれています。しかし、人物の過去や異空間の仕組みが明確に説明されるわけではなく、最後まで何が起きているのかを理解するのが難しい部分が残りました。特に終盤のメアリーの複製をめぐる展開は、謎を残したまま終わるため、すっきりとした結末を求める人には物足りなく感じられると思います。
本作は、分かりやすい怪物ホラーというよりも、夢の中で見たような場所を歩き続ける不条理劇に近い印象でした。現実とは異なる空間が延々と続き、登場人物がその中をさまよい、何が現実なのかもはっきりしないまま話が進んでいきます。物語の答えを明確に提示するタイプの作品ではなく、静かな映像と不思議な出来事を積み重ねていく構成です。
ただ、こうした何もない空間の映像に魅力を感じることができず、静かに進行する展開も合いませんでした。怪物が登場する後半には多少の変化があるものの、全体を通して大きな盛り上がりを感じられず、見ていて眠たくなる場面も多かったです。
異空間の映像や不条理な展開を楽しめる人には興味深い作品かもしれませんが、自分にとっては恐怖も違和感も十分に感じられず、終始退屈な一作でした。
☆☆
鑑賞日:2026/09/28 イオンシネマ座間
| 監督 | ケイン・パーソンズ |
|---|---|
| 脚本 | ウィル・スーディク |
| 原作 | ケイン・パーソンズ |
| 製作 | ジェームズ・ワン |
| 出演 | キウェテル・イジョフォー |
|---|---|
| レナーテ・レインスヴェ | |
| マーク・デュプラス | |
| フィン・ベネット |

