映画【蝋人形の館】感想(ネタバレ):恐怖と芸術が交差する映像体験。若者たちの旅路がたどり着く先とは

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●こんなお話

 若者たちがシリアルキラーに襲われるいつものホラー映画の話。 

●感想

 旅を楽しむ若者たちが、立ち寄った田舎町で徐々に異変に巻き込まれていく。ごく普通の青春ロードムービーのように始まる物語は、やがて恐怖に飲み込まれていく。車で移動しながら賑やかに語らう若者たちは、やがて不穏な空気を漂わせる一軒の屋敷にたどり着く。そしてそこに潜む異形の殺人鬼との遭遇が、彼らの運命を大きく変えていく。

 街そのものが不気味な沈黙に包まれており、誰かに助けを求めようとすると、頼った先すら敵の一部だったとわかる絶望的な構造が興味深いです。見かけは普通の田舎町でありながら、実はあらゆるものが罠であるという設定は、観る側にも常に緊張を強いる仕掛けになっている。主人公たちの視点に寄り添うことで、自分自身もその町の中に閉じ込められたかのような感覚に陥り、物語への没入感が高まっていく。

 そして物語は、登場人物たちが一人、また一人と消えていく展開へと進む。古典的なホラー映画らしい構造ではあるが、その様子をどこか様式美のように受け止めながら観ることができる。追い詰められる人々と、それを無表情に襲う異形の存在。逃げ場のない空間と音のない緊張感が、じわじわと視聴者の心を締めつけていく。

 ただし、本作はこの手のジャンルにしては少々時間が長く、殺人鬼との本格的な対決が始まるまでが思いのほか遅めです。そのため、中盤までは少し退屈に感じられる部分もありました。若者たちの過ごす何気ない時間や、町での不穏な出会いの数々が続く中で、緊張感が保ちきれずにしまう箇所も散見されました。

 しかしながら、終盤の映像演出には圧倒されるものがありました。特に、蝋人形が炎に包まれて溶けていくクライマックスの描写は、視覚的なインパクトが強く、ホラーという枠を超えて美術的な印象すら残すシーンだったと思います。蝋がどろどろと溶ける様子には、物語全体に流れる狂気と美しさが凝縮されており、目を奪われました。画面越しにも熱が伝わってきそうな映像に、強く惹きつけられました。

 ジャンルとしての王道を丁寧になぞりながら、古典的なホラーの手法を現代的な映像美で魅せる作りは、ホラーファンにとって見どころの多い一本だったと感じます。とにかく、絶望がじわじわと広がっていく感覚と、終盤に訪れる爆発的な破壊の美学。そのバランスが印象的な作品でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2019/01/10 Netfilx

監督ジャウム・コレット=セラ 
脚本チャド・ヘイズ 
ケアリーW・ヘイズ 
出演エリシャ・カスバート 
チャド・マイケル・マーレイ 
パリス・ヒルトン 
ブライアン・ヴァン・ホルト 

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