●こんなお話
終戦後に昭和天皇に戦争責任があったのかどうなのか日本の閣僚たちに話を聞くアメリカ軍人の話。
●感想
非情な破壊力を持つ原子爆弾が日本に投下され、ついに終戦が訪れます。その後、厚木飛行場に降り立つのは連合国最高司令官ダグラス・マッカーサーと、彼の部下であり本作の主人公フェラーズ准将。厚木飛行場に降り立つマッカーサーの姿は、サングラスにコーンパイプという独特のスタイルで広く知られていますが、実はあの有名な姿はある種のハッタリだったという導入から映画は始まります。数千人の日本兵が警備にあたる中、こちらは丸腰での降下。いつ銃弾が飛んでくるか分からない緊迫の状況にもかかわらず、あえて無防備を装い、圧倒的な余裕を見せて乗り込むその姿は非常に印象的でした。
物語の中心となるのは、戦争責任が天皇にあるのかどうかという問いに対して、主人公フェラーズ准将が日本側の重鎮たちに話を聞きに行く展開です。東条英機、近衛文磨、木戸幸一、関屋貞三郎といった実在の人物たちの証言を通して、開戦時に詠まれた短歌「四方の海 みなはらからと 思ふ世に など波風の 立ちさわぐらん」や、宮城事件、戦争指導会議の御聖断などが語られていきます。ただし、これらはすべて資料が確定的ではなく証言に頼る部分が多いため、果たして天皇に戦争責任があったのかどうか、真実の探求が続きます。
もうひとつの物語の軸として、主人公が戦前に出会い恋に落ちた日本人女性との恋愛が挿入されます。戦後、その女性の行方を探しながら、彼女の叔父である海軍大将から日本人の精神性や価値観について教えを受けるという流れが丁寧に描かれていて、この人間ドラマが全体の重厚なテーマに温かみを添えています。
クライマックスでは、ついに天皇陛下とマッカーサーの会談が行われ、そのシーンが大きな見せ場として描かれています。写真撮影の瞬間に立つお二人の姿や、天皇ご自身が「何故ここに来たのか」を語る短い言葉は、とても深い意味を持っており、見る者の心に強く響きます。私自身、映画を通じて改めて日本人としての天皇の存在の重みを感じ、知らず知らずのうちに涙があふれたことが印象に残っています。
若干の要望を言えば、アメリカ側の視点から天皇制を維持するのか、それとも廃止するのかといった議論のシーンがもう少し描かれても良かったように思います。戦犯として扱うのか否か、その政治的な駆け引きをもっと掘り下げれば、さらに深みのある物語になったかもしれません。しかしながら、それを描きすぎると尺が膨らみすぎてしまうため、あえて抑えられたのかもしれません。
全体としては、淡々としながらも繊細なテーマを丁寧に扱い、ハリウッド映画ならではのエンターテインメント性も忘れずに、ラブストーリーを織り交ぜつつ見応えのある作品に仕上げていると感じました。戦争の重みと人間の感情が静かに交錯する、非常に興味深い映画です。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2013/07/27 TOHOシネマズ南大沢
監督 | ピーター・ウェーバー |
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脚本 | デヴィッド・クラス |
ヴェラ・ブラシ | |
原作 | 岡本嗣郎 |
出演 | マシュー・フォックス |
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トミー・リー・ジョーンズ | |
初音映莉子 | |
西田敏行 | |
片岡孝太郎 | |
羽田昌義 | |
伊武雅刀 | |
夏八木勲 | |
中村雅俊 | |
火野正平 | |
桃井かおり |