●こんなお話
放火殺人で捕まった死刑囚からまだ明るみになってない殺人事件告白された記者が真相を追いかけるうちに「先生」と呼ばれる男が出てきて……な話。
●感想
何と言ってもリリー・フランキーさん、ピエール瀧さん演じる殺人犯が強烈なインパクトで、先生と呼ばれる男のカリスマ性とその2人の主従関係を凄惨な殺害シーンと共に描いていきます。
普段は2人とも温厚で優しい男ですが、何がきっかけとなるかわからない不気味さ怖さ。ピエール瀧さんは面会室で自分の話が記事にならないと知ると、さっきまでの態度とは一転「ぶち殺すぞ! コラァ」と激高する。見てるこちらは何が起こったのかと驚きました。
冒頭、いきなり殺害シーンから始まりツカミはバッチリで、そこから序盤は山田孝之さん演じる記者が死刑囚の話をもとに先生と呼ばれる男を点から線へとしていく探偵もののような流れ。
そして中盤からリリーさん演じる土地転売ブローカーなる男が登場して、彼らがいかにして連続殺人をしていくのかを描いていきます。彼がどうしてこんな風な男になったのかという背景が描かれないですが、それが怖いです。
リリーさんとピエールさん、そしてその子分たちとともに当たり前のように遺体をバラバラにしたり老人を殴ったり生き埋めにしたりスタンガンを何回も突き刺したりと、目を背けたくなるシーンの連続で緊張感がハンパないです。老人がいじめられるという映像だけで不快。老人を思い切りボッコボコに殴る音とか怖いんですけど。
そして加害者もおかしいですが、被害者側の家族も、やっぱり借金のせいなのか。殺害を依頼するという。全員ズレてる。自分ももし同じ立場なら同じこと言ってしまう人間なのだろうかと考えてしまいました。後は老人ホームの男も極悪非道でこいつも酷いです。ただその末路は急すぎて戸惑いました。
ただこの映画でいただけなかったのは、記者の認知症の母と介護に悩む妻のエピソード。これが長いこと挿入されますが、この中盤の凶悪な犯罪の数々の迫力に比べると圧倒的に軽すぎて一気に冷めてしまいました。
この家族描写、認知症の母に暴力をふるったことを泣きながら話す妻であったり、離婚届を出すシーンだったりと。あまりにも凶悪事件に比べると見劣りしてしまいました。
この事件に憑りつかれた記者というだけでよかったのではないのかな? とも思っちゃいました。
そして遺体がないので先生を死刑にできない。無期懲役でいいのだろうか? そして死刑囚は「被害者の方たちに贖罪の気持ちを持って生きていきます。生きてる意味を見出した」みたいな事を話したとき主人公が叫ぶ台詞「あなたは生きてちゃいけないんだ!」
またラスト、いよいよ対面する先生と主人公。「オレは無期懲役だ。まだ生きてる」と笑みを浮かべる。
実際の事件を基にした映画という枠だけでは終わらせないというエンディングでよかったと思います。よくよく考えると回想シーンは記者の主観なので実際はそうではないのかな? とか思ったりしました。
☆☆☆
鑑賞日: 2013/08/22 新宿ピカデリー 2014/05/03 Blu-ray
監督 | 白石和彌 |
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脚本 | 高橋泉 |
白石和彌 | |
原作 | 新潮45編集部 |
出演 | 山田孝之 |
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ピエール瀧 | |
池脇千鶴 | |
リリー・フランキー | |
白川和子 | |
吉村実子 | |
小林且弥 |