●こんなお話
21歳の自閉症の息子と暮らすお父さんが余命いくばくもないと知って、息子が何とか1人でやっていけるように頑張る話。
●感想
父親と息子が重りをつけて海に飛び込み、自殺を図るような場面から静かに始まります。しかし翌朝、2人は無事に帰宅し、隣人の女性が気づいて様々な差し入れを持ってきてくれるところから、日常が再び動き出します。
主人公の職場は水族館で、彼が仕事をする間、息子は水槽の中に潜って楽しそうに泳ぐなど、束の間の穏やかな時間が描かれます。しかし、主人公は末期癌で余命いくばくもない身。彼は、息子を自立させるために、以前通っていた学校や養護施設を訪ねて預けられないか奔走しますが、なかなか受け入れてもらえません。
その中で主人公は、息子に料理の仕方や交通ルール、日常の暮らし方などを一つひとつ丁寧に教え始めます。主治医が自宅を訪ねてきたことをきっかけに、隣人の女性も彼の病気を知ることとなり、主人公に好意を寄せている様子が描かれます。主人公は彼女に、自分の遺影や預金などを託し、死後の息子のことを頼むのでした。
やがて、ようやく息子を受け入れてくれる施設が見つかり、主人公は息子を預けますが、息子は一人では眠れず、結局父親も引っ越して近くに住むことに。息子は水族館の近くにいた大道芸人の女性と交流を深めますが、彼女は旅立ってしまい、儚い別れを経験します。
主人公は息子に、「自分はウミガメになるんだよ」と伝え、やがて静かに息を引き取ります。残された息子は、父から教わった日常の知恵を守りながら、周囲の人々に支えられて生きていきます。
本作で主演を務めたアクション俳優ジェット・リーは、これまでとは一線を画す静かで哀愁漂う演技を見せており、彼の存在感そのものが深い感動を呼びました。小柄な彼がさらに小さく見えるほど、病に侵されながらも息子に愛情を注ぎ続ける姿には、胸を打たれました。
特に印象に残ったのは、何度注意してもテレビの上にぬいぐるみを置いてしまう息子。それを、息子がいなくなった後に主人公が一人で触れるシーンが非常に感動的でした。
中盤からは、父としての教育と、息子との最後の時間が丁寧に描かれ、じんわりと心に残る作品に仕上がっていました。一方で、大道芸人の女性など一部の登場人物の描写がやや中途半端に感じられたのは惜しい点です。
それでも、父親の人間性が周囲に影響を与え、息子の成長を支えてくれる人々が現れるというラストには、強い希望と感動を感じました。
☆☆☆
鑑賞日: 2015/03/27 DVD 2024/11/05 U-NEXT
監督 | シュエ・シャオルー |
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脚本 | シュエ・シャオルー |
出演 | ジェット・リー |
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ウェン・ジャン | |
グイ・ルンメイ | |
ドン・ヨン |