映画【狗神】感想(ネタバレ):閉鎖的な村の恐怖を描いた異色の邦画――映像美と違和感が交錯する一本

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●こんなお話

 田舎で閉鎖的な村人たちと教師が赴任してきていろいろとrブルが起こる話。

●感想

 映像はとにかく美しくて、森の深い緑がスクリーンに映えるカットの数々は見ごたえがありました。日本の閉鎖的な村社会の独特な怖さや、どこか奇妙で理屈が通らない空気感も映像でしっかり表現されていて、雰囲気映画としては見応えがあったと思います。

 ただ、その雰囲気を存分に活かすべき会話劇が非常に聞き取りづらかったです。原田眞人監督らしい、ぼそぼそとした早口のセリフ回しに加えて、四国弁の強めな訛り、そしてテンポの速いカット編集が組み合わさって、肝心の会話の内容がうまく入ってこなかったです。言葉を理解する前に場面がどんどん進んでいくので、物語の細かい筋がつかみにくく、感情移入もしづらかったです。

 キャスト選びもあまりうまくいってない印象で、特に天海祐希さんの役どころに違和感があったり。作中では「お婆さん」と呼ばれる設定なのに、見た目にはまったくそうは見えず、どこが年配なのか疑問に感じてしまうレベルでした。そのキャラクターに恋をしてしまう教師役の渡部篤郎さんも、天海さんと年齢的にさほど離れて見えず、親子ほどの年齢差があるという設定に説得力が持てなかったです。もっと“許されざる恋”の禁断感がにじみ出るキャスティングだったら、テーマに深みが出ていたはずと思ったり。

 物語の核である「呪われた一族が村人に差別され、やがて反撃する」という流れも描写が曖昧で、観ていて明確に伝わってこず。クライマックスでは突然画面が白黒に切り替わり、時代劇と現代劇が交互にカットバックされるという演出が入るけれど、その意図が読み取りづらく、混乱してしまいました。

 せっかく雰囲気は抜群に良いのに、演出との噛み合わせが悪くて映画としての完成度を下げてしまっているように感じました。原田監督のスタイルが、この作品の題材にはあまり合っていなかったのかもしれないです。

☆☆

鑑賞日: 2020/02/16 WOWOW

監督原田眞人 
脚本原田眞人 
原作坂東眞砂子 
天海祐希 
渡部篤郎 
山路和弘 
遊人 
矢島健一 
深浦加奈子 
藤村志保 
淡路恵子 
街田しおん 
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