映画【マトリックス レボリューションズ】感想(ネタバレ):壮大な戦いと愛の選択、シリーズ完結編が描く静かな余韻

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●こんなお話

 人間とマシンの戦いもいよいよ大詰めの話。

●感想

 シリーズを通して独特の世界観と映像美で観客を魅了してきたマトリックスも、いよいよ完結編。ここまでの物語の積み重ねと、技術の進化を見せつける映像演出にはやはり期待が高まるところですが、シリーズ3作目ともなると、その期待の上を行くインパクトを与えるのはなかなか難しいところがあるのも確かで、今回も派手なアクションがふんだんに詰め込まれているものの、全体としては既視感のある展開が続き、どうしても新鮮味に欠けてしまう印象がありました。

 物語は前作のラストから続いており、意識を失った主人公を救出するために、仲間たちがマトリックス内部に入り込むところから始まる。モーフィアスらがフランス人が仕切るクラブへと突入し、銃撃戦が展開される序盤のアクションシーンも、スローモーションを多用した演出など、これまで何度も見てきた表現が多く使われており、映像としては迫力がある一方で「またこれか」と感じてしまうような感覚もありました。特に相手側のキャラクターたちも重力を無視した動きを見せるので、現実と仮想の境界線が曖昧になり、観ていて没入しきれないもどかしさが残ります。

 主人公はマトリックスと現実の狭間のような場所に囚われており、仲間たちの手によってようやく救出されることになる。その間、現実世界にもエージェント・スミスの影響が及んでおり、現実に干渉してくるというスリリングな展開に。人類側の拠点であるザイオンが襲撃を受け、マシンとの全面戦争へと突入する流れは、シリーズの中でも最も大規模な戦闘シーンが続いていく。

 機械の軍勢が物量で押し寄せる中、それを迎え撃つ人類側の兵士たちが大型兵器に乗り込んで迎撃するという描写は迫力があり、特にミフネ船長の奮闘などは見応えがありました。全体としてもこのあたりの描写はシリーズらしい力技で押し切っていくような勢いがあり、アクションとして楽しめる構成だったと思います。

 物語の終盤では、主人公がマシン側のボスに「エージェント・スミスの増殖が危険だ」と訴え、敵の敵は味方理論なのか、バックアップを受けて再びマトリックスに入り、スミスと一騎打ちへと突入する流れに。このクライマックスでの2人の戦いも、シリーズ通してのカンフー的アクションの延長線上にあり、派手な動きや視覚的な仕掛けが次々に展開されていくのですが、ここでもどこかアニメ的といいますか、あまり痛みや緊張が伝わってこない戦いで、どうにも感情が動かされるまでには至らなかった印象が残りました。

 戦いの決着も、預言者を取り込んだスミスが勝ったように見えて、主人公がなぜか勝ってしまうという、抽象的なオチで、いまいち腑に落ちない終わり方だったのは否めません。マトリックス内で朝日か夕日を見上げる預言者と子どもの姿がラストに描かれるのですが、それが何を意味しているのかは、はっきりとした説明もなく、象徴的な余韻として終わっていきます。

 その一方で、主人公と恋人との再会、負傷した彼女とのやり取りなどは、前作の別れを思い起こさせる構成になっており、感情的に揺さぶられる場面でもありました。愛の力がキーとなる物語の軸をしっかりと描いている点には、シリーズ通しての一貫性を感じられて良かったです。

 完結編として、キャラクターたちがそれぞれの道を歩み、壮大な世界の一端が静かに収束していく流れは、長く続いた旅路の一区切りとして納得できるものであったと感じました。エージェント・スミスという存在の掘り下げも進み、もはや主人公よりも印象的な場面を多く担っていたこともあり、最終的に彼が主役のように見えてしまったというのも否定できませんが、それもまたこのシリーズらしさの一つとして記憶に残るものだったと思います。

☆☆☆

鑑賞日: 2015/10/09 NETFLIX 2021/12/20 NETFLIX

監督ラリー・ウォシャウスキー 
アンディ・ウォシャウスキー 
脚本ラリー・ウォシャウスキー 
アンディ・ウォシャウスキー 
出演キアヌ・リーヴス 
ローレンス・フィッシュバーン 
キャリー・アン・モス 
ヒューゴ・ウィーヴィング 
ジェイダ・ピンケット・スミス 
モニカ・ベルッチ 
コリン・チャウ 
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