●こんなお話
1945年の太平洋戦争末期、福島原発が建設される間際の1966年、2011年と2012年にかけての家族が原発にふりまわされる話。
●感想
出だしはいろんな時代を1シーンで入れ替わっていって時代が入り乱れるので混乱しますが、時代によって画面の色調がブルーだったりイエローだったりセピア色だったりと映像に工夫がされていて、見て行くうちに登場人物の関係性もわかっていきました。
1945年は核爆弾の研究のためにウランを採掘する学徒と監督する軍人さんの関係。1966年では福島原発誘致に賛成か反対かで揉めている住民たち。そんな中、反対派の娘さんと彼氏さんとの関係が描かれ、なかなか就職が決まらない。2011年では祖母がどうやら浮気しているのではないかと疑う孫。2012年では家族崩壊してしまい、身体を売っている孫と被災地の募金を集金してそれを自分のご飯代にしている男の子との関係を描きつつ、津波で亡くなった祖母への思い。
同時進行で描かれるためにシーンが切り替わるたびに物語への没入が途切れてしまって退屈さを感じてしまいました。演出も静かに淡々に進むので余計にそう感じたのかもしれません。現代パートで主人公が被災地の汚染された葉っぱを東京の空に巻くとか印象的な盛り上がりになりそうでしたが、静かに描かれていきました。
物語が進むにつれてそれぞれの時代が繋がっていき、1つの家族の物語に集約されていくのとかはよかったです。
現代の主人公は祖母が困ればいいと車のキーを捨ててしまいますが、それが原因で津波に飲まれてしまう。その傷を負って生きている。けれど福島で作られた電気が東京に送られて、事故があって自分たちはこんな生活になっているのに、東京の街はもうすっかりと被災地を忘れてしまって、あるテロを実行しようと怒りの行動をするけど。祖母が最期に人助けをしていたことを知る。
それを知り自分と祖母の差を痛感して「会いたいよ」と涙する。そして被災地でホルンを吹く。それが時代を超えて繋がるという演出は映画的で面白かったです。
震災の悲劇や福島原発への批判は確かに訴えかけるものがあってよかったですが、もっと深く強烈に鮮明に掘り下げてくれたほうが個人的には面白かったと思いました。
☆☆☆
鑑賞日: 2014/07/08 テアトル新宿
監督 | 菅乃廣 |
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脚本 | 井上淳一 |
出演 | 夏樹陽子 |
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勝野洋 | |
千葉美紅 | |
黒田耕平 | |
大谷亮介 | |
大池容子 | |
伊藤大翔 | |
大島葉子 | |
沖正人 |