●こんなお話
すっかりアクション俳優になったリーアム・ニーソンが今度は飛行機で脅迫されてっぞとなって大暴れする話。
●感想
ある傷を心に抱え、日々アルコールに頼る生活を送っている航空保安官の主人公。物語は、彼がいつものように乗務のため、国際線の旅客機へ搭乗するところから始まります。乗客たちはそれぞれ思い思いの旅支度を整え、静かな離陸の時を待っている。そんな中、主人公のケータイに突如として届いた一本のメッセージが、物語を大きく動かしていきます。
「お金を振り込まなければ、20分ごとに乗客を1人ずつ殺していく」という脅迫文。機内の穏やかな空気とは裏腹に、緊迫したサスペンスが突如として立ち上がります。誰が犯人なのか、どこでその脅迫が実行に移されるのかもわからないまま、主人公は客席を行ったり来たりしながら警戒を強めていきます。
しかし最初に起きる殺人が、なんと主人公自身の手によって発生してしまうという意外な展開。この状況すら犯人の計算のうちだったのかと、疑念が広がります。本当に偶然なのか、あるいは主人公の心理を読んだ上での周到な計画だったのかと考えると、背筋がひんやりするような気持ちになりました。
隣の席に偶然居合わせたヒロインの女性も、どこかミステリアスな雰囲気を持っており、味方なのか敵なのか判別しきれない存在として登場します。物語の初期では彼女の人物描写が控えめだったため、観ている側としては感情移入がしにくく、もう少し深く掘り下げてほしかったと感じました。
一方で、主人公の過去や娘に関する悲しい出来事も物語に挿入されますが、脅迫者との心理戦を軸に据えていたほうが作品としての統一感があったように思います。その分だけ、観る側の緊張感が散漫になってしまった印象も否めませんでした。
登場する乗客たちは、それぞれ怪しい言動を取り、視覚的にも「いかにも怪しい」という衣装や振る舞いが目立ちます。これが逆に全体のリアリティをやや損ねてしまっていたように感じました。誰が犯人か全く予測できない状態が続くのはミステリーとして面白い一方で、主人公自身が焦りからか行動が過剰になり、結果的に乗客たちの視点では彼がテロリストのように映ってしまうという皮肉な構図が印象的でした。銃を手にトイレでたばこを吸う姿には、緊迫した空気の中にふとユーモアを感じる瞬間もありました。
とはいえ、クライマックスで登場する副操縦士の冷静な判断と勇気ある操縦には胸を打たれました。彼の力強い操縦がなければ、乗客全員が命を落としていたのではないかと思わせるような場面で、作品全体の緊張を見事に引き締めてくれました。
また、航空保安官という職業について、実際にどういった任務を日々担っているのかを垣間見ることができたのは興味深かったです。ファーストクラスに乗って脅迫メールと格闘するという姿には驚きがありましたが、それだけ責任と判断が問われる職務であることを、改めて感じさせてくれる描写でもありました。
全体として、密室サスペンスとしての構成はしっかりと組まれており、テンポよく進んでいく物語にハラハラさせられる展開が続きました。犯人の意図や動機には少し弱さもありましたが、キャラクターたちの駆け引きや、限られた空間での心理戦の妙を楽しめる作品でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2014/09/13 TOHOシネマズ南大沢 2015/07/30 Blu-ray
監督 | ジャウマ・コレット=セラ |
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脚本 | クリス・ローチ |
ジョン・リチャードソン | |
ライアン・エングル |
出演 | リーアム・ニーソン |
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ジュリアン・ムーア | |
スクート・マクネイリー | |
ミシェル・ドッカリー | |
ネイト・パーカー | |
ジェイソン・バトラー・ハーナー | |
アンソン・マウント |
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