ドラマ【ザ・ボーイズ】感想(ネタバレ):ヒーローは救世主か、それとも怪物か

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●こんなお話

 スーパーヒーローを大企業がビジネスとして扱っている世界で、スーパーヒーローたちに恨みを持つボーイズとヒーローたちにもいろいろ事情がある8話。

●感想

 主人公ヒューイは、家電量販店で働くごく普通の青年。ある日、恋人と街を歩いていると、突如高速で移動するスーパーヒーローがぶつかってきて、目の前で恋人が無惨に命を落としてしまう。そのヒーローは、巨大企業ヴォートに雇われている存在で、企業側は形ばかりの謝罪と賠償金で事件をもみ消そうとします。納得のいかないヒューイの前に現れたのが、ブッチャーという謎のイギリス人。彼は「ザ・ボーイズ」と呼ばれるヒーロー対抗組織を再結成し、スーパーヒーローの裏の顔を暴くために動き始めます。

 ブッチャーの仲間として、元軍人で家族思いのマザーズミルク、陽気ながら狂気も抱える爆破工作員フレンチが合流し、ヒューイも自分なりの復讐心を抱えて参加。その一方で、田舎から上京して憧れのヒーローチーム「セブン」に加入したばかりの新人スターライトも物語の鍵を握る存在。彼女はスーパーパワーを持ちながら、メディアの演出やマーケティング戦略の一環として露出度の高い衣装を強要され、宗教イベントに駆り出されたり、さらには先輩ヒーローのセクハラにも苦しみます。

 そんな彼女が出会うのが、主人公ヒューイ。お互いに素性を知らぬまま惹かれ合い、次第に心を通わせていきますが、ヒューイはスターライトを利用してヒーロー内部の情報を得るという任務も背負っていました。

 ヒーロー側にもそれぞれの闇があり、中でも圧倒的な力を持つホームランダーは極度のマザコン気質で、社会的常識が欠如しており、敵味方問わず簡単に人命を奪う危険な存在。飛行機テロの対応に失敗するなど、無責任で恐ろしいリーダー像が浮かび上がります。さらに、恋人にその存在を隠すことで苦しむAトレイン、高い能力と反比例する社会的地位に悩むアフリカ系アメリカ人としての葛藤も描かれたり。

 一方、ブッチャーたちボーイズのチームにも個性が光ります。フレンチと交流を深めるキミコという謎のアジア人女性は、強力な戦闘能力を持ちながら言葉を話せず、過酷な過去を背負っています。ヒーローとはまた違った苦しみや人間性が描かれます。

 クライマックスでは、ブッチャーがヴォートの副社長を人質にし、ホームランダーを呼び出して爆破を試みるものの失敗。気づけば、行方不明だった妻とその息子の姿が現れ、さらに衝撃の事実としてホームランダーが「その子の父親」だと語るシーンでおしまい。

 この作品が魅力的なのは、ヒーローを「正義の味方」として描くのではなく、自らの欲望のまま力を行使し、問題が起きれば巨大資本で揉み消すという歪んだ世界観。だからこそ、能力で圧倒的に劣る人間たちがどうリベンジするのか、その戦略と葛藤が非常に面白く描かれていました。

 アクションシーンの迫力も十分で、単なるスーパーヒーロー作品にはない皮肉や社会風刺が効いた傑作です。すべての問題が解決しないまま終わるシーズンですが、それだけに続きが気になって仕方のない構成になっています。

☆☆☆☆

鑑賞日:2019/12/04 Amazonプライム・ビデオ 2024/06/11 Amazonプライム・ビデオ

製作総指揮セス・ローゲン
エヴァン・ゴールドバーグ
原作ガース・エニス
出演カール・アーバン
ジャック・クエイド
アントニー・スター
ジェニファー・エスポジート
エリザベス・シュー
ラズ・アロンソ
エリン・モリアーティ
ドミニク・マケリゴット
チェイス・クロフォード
福原かれん

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