●こんなお話
イケてない主人公がクラスイチのイケメンさんに片思いをするけど、番長ともいい官人になっていく話。
●感想
リン・チェンシンは、仕事でも恋愛でも思うようにいかず、日々を淡々と過ごしている大人のOLだ。ある日、ラジオから流れてきたアンディ・ラウの曲が、彼女の心に強く響く。青春時代に夢中になったその歌声は、忘れていた高校時代の記憶を一気に呼び起こす。
学生時代のリンは、目立つタイプではなく、控えめでごく普通の女子高生だった。同じ学校には、優等生で容姿端麗なオウヤン・フェイファンと、荒っぽいがどこか憎めない不良少年のシュー・タイユイという、対照的な二人の男子がいた。リンは密かにフェイファンへ憧れ、「不幸の手紙」が回ってきたことをきっかけに匿名で「不幸の手紙」を書き、転送する。しかし、その手紙はタイユイの手にも渡ってしまい、封筒に貼られていたアンディ・ラウのステッカーから、彼は送り主がリンだと気づく。そこから、リンは突然タイユイにこき使われる立場になり、奇妙な関係が始まってしまう。
ある日、リンはプールサイドでフェイファンとミンミンが密会しているところを目撃し、胸が締めつけられるようなショックを受ける。その心の傷を抱えたまま、リンはタイユイと「失恋同盟」を結成する。叶わぬ相手を思い続ける者同士、二人は似た痛みを共有し、少しずつ互いの存在に救われていく。
やがて、リンは勉強や部活動の出来事、内気な自分との向き合い方を通じて、ゆっくりと自分を見つめ直すようになる。タイユイとの関係も、最初は反発だらけだったものの、悩みや不安を共有するうちに友情から微かな恋情へ変わっていく。タイユイには不良仲間との摩擦、家族の問題、将来への迷いなど多くの葛藤があり、リンは彼の孤独に気づき始める。
一方のフェイファンもまた、自分の進むべき道を模索しており、リンとの距離は少しずつ変化していった。学校では厳しい教師への反発でクラス全員が一致団結する場面もあり、学生たちの熱や葛藤がそのまま青春の輝きとして描かれていく。
高校最後の夏、リンはタイユイへの思いが友情を超えていることに気づく。あの時間にしか存在しなかった、かけがえのない自分自身を実感しながら、季節は過ぎていく。そしてタイユイの吹き込んだテープで彼の思いを彼視点でリンへの気持ちに気づくのが描かれる。
そして物語は再び現代に戻る。大人になったリンはアンディ・ラウは、アンディ・ラウのコンサートが開催され、チケットは満席のためガッカリだったリンはアンディ・ラウ本人と出会って、アンディ・ラウからコンサートに招待される。会場に行くと、彼女は思いがけない再会を果たす。アンディ・ラウのコンサートを企画したタイユイだったことが判明しておしまい。
物語の設定そのものは、少女マンガで繰り返し描かれてきた王道の展開とも言えますが、映画としてとても魅力的に仕上げられていたと感じました。主人公は地味で冴えないように見えるものの、ふとした瞬間に本来の美しさがあらわれるという定番の流れがありますし、番長タイプの少年が荒っぽさの裏に繊細な過去を抱えているという描き方も王道そのものです。それでも、役者の魅力や演出のバランスが良く、どこか心地よい説得力がありました。
台湾の学生生活が描かれる場面も興味深く、多少デフォルメされているとは思いますが、強権的な教師との対立や、クラス全体で行う水風船のイベントなど、印象的なエピソードが多く、青春の日々が鮮やかに映っていました。
不幸の手紙をきっかけに物語が動き始め、登場人物たちの心が揺れ動く様子を見ていると、自然と応援したくなる感情が湧いてきます。設定だけ聞くと古く感じる部分もあるはずなのに、正面から真っ直ぐ描いているため爽やかさがあり、素朴な良さを強く感じました。
また、劇中に登場するマンガや日本のアイドル文化が随所に散りばめられていて、日本の観客にも親しみやすく、その点も楽しく鑑賞できました。青春映画としての明るさと瑞々しさがしっかりと息づいている作品だったと思います。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2018/08/28 DVD 2025/11/21 DVD
| 監督 | フランキー・チェン |
|---|---|
| 脚本 | ツォン・ヨンティン |
| 出演 | ビビアン・ソン |
|---|---|
| ダレン・ワン | |
| ディノ・リー | |
| デヴィ・チェン | |
| 特別出演 | アンディ・ラウ |



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