●こんなお話
女性警官連続殺人を追いかける龍を味方につけている刑事の話。
●感想
香港警察の刑事ガウ・ロンは、幼少期に「九つの頭を持つ龍」を目撃したという異様な記憶を抱えながら生きている男だった。周囲は誰ひとりとしてその話を信じず、彼は孤独と怒りを抱えたまま成長していく。彼の胸には巨大な龍の刺青が刻まれており、その存在は彼の精神状態の危うさを象徴するものになっていた。
ある日、ガウ・ロンはマフィア組織への潜入捜査を行い、激しい銃撃戦の末にボスを追い詰める。しかし相手から龍の刺青を嘲笑された瞬間、感情が爆発してしまい、拳銃を乱射する騒動を起こしてしまう。犯人逮捕には成功したものの、その危険すぎる行動を問題視され、香港警察から地方署へ左遷されることになる。
地方での新生活を始めたガウ・ロンは、精神科医ウォンの診察を受けながら、恋人で婦警のニンとの結婚準備を進めていた。少しでも穏やかな人生を取り戻そうとしていた矢先、女性警官ばかりを狙った連続誘拐事件が発生する。
ガウ・ロンは捜査チームを率いて犯人を追うが、偽の通報によって部隊を誘導され、その隙を突かれてニンが誘拐されてしまう。彼は必死に犯人を追跡するものの、銃撃を受けて転倒し、あと一歩のところで取り逃がしてしまう。恋人を守れなかった後悔だけが残り、事件は未解決のまま時が過ぎていく。
一年後。ガウ・ロンは警察を辞め、ボクサーとして荒れた生活を送っていた。ニンの生存を信じて夜の街をさまよい続ける。
そんな中、マカオで香港の事件と酷似した婦警殺害事件が発生する。元部下のモウ刑事は事件の関連性を疑い、ガウ・ロンへ協力を求める。当初は拒否していたガウ・ロンだったが、犯行現場に残された銃弾が香港警察のものだと見抜き、一年前の事件との繋がりを確信する。
捜査を進める中で、ガウ・ロンはスポーツジムのインストラクター「レディ」と出会う。彼女は捜査に協力的ではなく、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。さらに元米兵シンクレアとも遭遇する。彼はかつて警察親善試合でガウ・ロンに敗北した過去を持ち、その屈辱を今も忘れていなかった。
ガウ・ロンはレディを尾行するが、突如現れたバイク集団に襲撃され、取り逃がしてしまう。その後も独断で捜査を進めた結果、マカオ警察から追放同然に香港へ送り返される。
しかし「レディが香港に現れた」という情報を掴んだガウ・ロンは、かつての警察仲間を集めてアジトを急襲する。だがその情報は敵側へ漏れており、待ち伏せされていた。地下鉄車内でレディとの激しい戦いとなり、脱線事故の衝撃で彼女は死亡する。
その後、レディの隠れ家でガウ・ロンは自分宛ての荷物を発見する。中に入っていたのは変わり果てた姿となったニンの遺体だった。
絶望するガウ・ロンだったが、やがて事件の真相へ辿り着く。シンクレアには息子がいた。かつてガウ・ロンとの試合を観戦していたその息子は、婦警たちから父親を馬鹿にされ、敗北したシンクレアとも口論になる。そして車を飛び出した直後、交通事故で死亡してしまった。
シンクレアはその責任を婦警たちとガウ・ロンへ向け、復讐として女性警官ばかりを狙う連続事件を起こしていた。
ガウ・ロンはシンクレアとの最後の戦いへ向かい、高層ビルで激突する。二人は壮絶な肉弾戦を繰り広げ、やがてシンクレアはボートで逃亡する。しかしその海上に、ガウ・ロンが幼い頃から見続けてきた巨大な九頭龍が現れる。龍はシンクレアを弄ぶように襲い、最後には尾で吹き飛ばす。ガウ・ロンの前へ叩きつけられたシンクレアは、そのまま絶命する。
事件解決後、ガウ・ロンはようやく精神科医ウォンの治療を受ける決意をする。彼が見続けていた龍が現実だったのか、それとも精神の闇が見せた幻覚だったのかは最後まで明確には語られないままおしまい。
龍が普通に出てきてしまうので、この映画が現実寄りの刑事アクションなのか、それとも怪奇ファンタジーなのか、そのリアリティラインが最後までかなり独特でした。冒頭から「九つの頭を持つ龍」の存在を真正面から描いてくるため、こちらも「どういう世界観として見ればいいのか」と戸惑いながら鑑賞するタイプの作品だったと思います。
ただ、アクション映画としての迫力はやはり凄まじく、マックス・チャンの身体能力の高さが全編で炸裂していました。特にレディとの地下鉄内でのバトルは狭い空間を利用した動きが面白く、吹き飛ばされながら戦う重量感も見応えがありました。終盤の高層ビル、バンジージャンプ台付近でのシンクレアとの決戦も、危険な画作りが続き、香港映画らしい勢いが強烈でした。
マックス・チャン自身の存在感もかなり格好良く、精神的に壊れかけている刑事なのに異様なカリスマがある。疲弊した顔で夜の街を歩いているだけでも絵になっていて、そこはスター映画として非常に魅力的だったと思います。
一方で物語の方はかなりぼんやりしていて、シンクレアとの因縁や復讐の動機も、説明されているのに感情として飲み込みづらい部分がありました。婦警に笑われたことから全てが狂っていく流れも極端で、事件捜査そのものの面白さやサスペンス性が弱かった印象です。
さらに主人公自身が常に情緒不安定なので、推理で追い込んでいくタイプの刑事ドラマというより、精神世界をさまよう男の幻覚混じりのアクション映画として見たほうが楽しめる作品だった気がします。
それでも、電車アクション、高層ビルでの格闘、突然現れる巨大な九頭龍など、「こんな映像を本気でやるのか」という香港映画らしい無茶苦茶な熱量が詰まっていて、他ではなかなか味わえない怪作として強い印象を残す一本でした。
☆☆
鑑賞日:2026/05/10 U-NEXT
| 監督 | フルーツ・チャン |
|---|---|
| アクション監督 | トン・ワイ |
| ジャック・ウォン | |
| 脚本 | フルーツ・チャン |
| ジェイソン・ラム |
| 出演 | マックス・チャン |
|---|---|
| アンデウソン・シウバ | |
| ケビン・チェン | |
| アニー・リウ | |
| ラム・シュー | |
| ステフィー・タン |

