●こんなお話
人形を買ったらその人形が呪いの人形みたいだった話。
●感想
鈴木佳恵と夫・忠彦が最愛の娘・芽衣を事故で失い、深い喪失感の中で生活を送るところから始まる。佳恵は心の均衡を崩し、日常生活にも支障をきたすほど精神的に追い詰められていく。夫婦の関係もぎこちないものとなり、家の中には重苦しい空気が漂い続ける。
そんな中、佳恵は骨董市で日本人形を見つける。その人形を購入したことで、彼女の行動は変化していく。人形に話しかけ、食事を与えるように扱い、まるで生きている娘の代わりとして接し始める。次第に佳恵の精神状態は安定し、失われていた日常が少しずつ戻り始める。
やがて夫婦の間に新たな娘・真衣が誕生する。佳恵と忠彦は現実の子どもである真衣に愛情を注ぐようになり、かつて執着していた人形は家の中に置かれたまま次第に忘れられていく存在となる。
年月が経過し、真衣が5歳になる頃、彼女はその人形に興味を持ち遊び始める。その頃から家庭内で異変が起こり始める。物の位置が変わる、誰もいない場所から音がする、視線を感じるなど、日常の中に明確な異常が入り込んでくる。
当初は佳恵の思い込みとして受け止めていた忠彦も、同様の現象を体験することで状況を無視できなくなる。二人は異常の原因が人形にあると判断し、処分を試みる。しかし人形は捨てても戻ってくる、供養に出しても再び家に現れるという現象が繰り返される。
逃れられない状況の中で、夫婦は専門家に相談し、人形の来歴を調べ始める。人形がどのように作られ、どのような経緯で骨董市に流れ着いたのか、その背景に過去の出来事や関係者の存在が浮かび上がっていく。
やがて二人は、人形に関係する発端の地である島へ向かい、正式な供養を行うことで事態の収束を図る。儀式は一度は成功したかのように見え、異常現象も収まったかに思われる。
しかしその後、専門家が供養の手順に誤りがあったことに気づく。完全に解決されたはずの現象が実際には終わっておらず、佳恵と忠彦自身がなお人形に影響を受け続けている可能性が示される。人形の力が消えていないことが示唆されるまま、物語は不穏な余韻を残しておしまい。
全体として、非常にオーソドックスな構造のホラーでありながら、テンポの良さと見せ場の積み重ねによって最後まで飽きずに楽しめる作品でした。不可思議な現象が段階的に強まっていく流れや、それに対して対処しようとしては失敗する展開が繰り返されることで、緊張感が持続していた印象です。
特に印象に残るのは、超常現象を信じていなかった人物が実際に異変を体験し、認識を改めていく過程です。疑念から確信へと変わる流れが物語に説得力を与えており、観ている側にも恐怖が伝わってきました。
また、人形という身近で静的な存在を恐怖の中心に据えたことで、派手な演出に頼らずとも不安を喚起する作りになっていた点も魅力的です。家庭という閉じた空間で起こる出来事だからこそ、逃げ場のない怖さが強調されていたと感じました。
シンプルな構成ながらも、喪失と執着が引き起こす出来事を軸に据えることで、単なる怪異の連続では終わらない奥行きが生まれていた作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2026/04/12 DVD
| 監督 | 矢口史靖 |
|---|---|
| 脚本 | 矢口史靖 |
| 原案 | 矢口史靖 |
| 出演 | 長澤まさみ |
|---|---|
| 瀬戸康史 | |
| 田中哲司 | |
| 池村碧彩 | |
| 本田都々花 | |
| 今野浩喜 | |
| 西田尚美 | |
| 品川徹 | |
| 安田顕 | |
| 風吹ジュン |

