●こんなお話
太陽エネルギーが低下して地球滅亡の危機なので宇宙に向かって原因を探る話。
●感想
主人公ライランド・グレースが見知らぬ宇宙船の船内で昏睡状態から目覚める場面から始まる。彼は自分の名前以外の記憶を失っており、船内には二人のクルーの遺体が固定されたまま残されている。自動化された医療装置とコンピュータの補助を受けながら、彼は船内の状況を確認し、外が宇宙空間であること、自分が長期航行中であることを理解する。
船のログや保存映像を再生するうちに、記憶が断片的によみがえる。彼は元は中学校の理科教師だった。地球では太陽の光度が急速に低下する異常が観測され、その原因として太陽エネルギーを吸収する微生物アストロファージが発見されていて、やがて地球を氷河期へ導くと予測されていた。
各国は協力して対策チームを結成し、アストロファージの影響を受けていない恒星タウ・セチへ探査船ヘイル・メアリー号を送り込む計画を立案する。ライランドは当初任務を拒否するが、最終的に乗組員として選ばれ、強制的に冷凍睡眠での長期航行に入る。目覚めた今、彼だけが生存者だった。
タウ・セチ星系で観測を行う中、彼はアストロファージが存在しない恒星があることを確認する。さらに近傍に人工物らしき構造物を発見し、接近する。そこにいたのは五本の肢を持つ異星生命体ロッキーだった。ロッキーも自らの母星を救うために派遣されていた。
両者は当初互いの言語を理解できないが、数学的法則や音階を用いた通信を重ね、共通言語を構築する。ライランドは船内に実験環境を整え、ロッキーとともにアストロファージを捕食する別種の微生物を発見する。この微生物を培養すれば恒星の光度低下を止められる可能性があると判明する。
作業中に事故が起き、ライランドは重傷を負うが、ロッキーが危険を冒して救出する。二人は協力して大量培養に成功し、それぞれの母星へ帰還する準備を整える。
別れて帰還航路に入った後、ライランドはロッキーに危機が迫っていることがわかり、彼は地球帰還を断念し、進路を変更してロッキーを救助へと向かう。救助の代償として地球へ戻る燃料を失い、ライランドはロッキーの母星へ向かう決断を下す。
ロッキーの世界に到達した後、ライランドは異星環境に適応した居住区で生き延びる。彼はロッキーの種族の子どもたちに科学を教える役割を担い、星を救うための知識を伝える日々を送っておしまい。
宇宙船内部のデザインや機材のディテール、無重力下での生活描写などは非常に作り込まれており、SF美術が好きな方にはたまらない世界観だと感じました。実験装置や宇宙人の宇宙船、船内の限られた空間を活用する工夫など、細部まで目が行き届いております。
一方で、科学的説明や実験過程が丁寧に積み重ねられる構成のため、理屈を追う楽しみを共有できない場合は物語が長く感じられるかもしれません。主人公が顕微鏡をのぞき込んで歓喜する瞬間も、背景にある理論を理解してこそ高揚が伝わる場面だと思いました。
ロッキーとの意思疎通のくだりも、言語構築の過程を丹念に描くため時間を要します。バディものとしての感情的盛り上がりよりも、科学的協働の積み重ねに重点が置かれている印象を受けました。
SF作品としては硬派で、観客にある程度の科学リテラシーを求める作りです。宇宙工学や生物学に興味がある方には深く刺さる一方、そこに関心が薄い場合は上映時間の長さが気になるかもしれません。
それでも、人類存亡の危機を前にした選択と、異なる知性との協力というテーマは明快です。孤独な飛行士が友を救うため帰還を捨てる決断には、静かな余韻が残る1作でした。
☆☆☆
鑑賞日:2026/03/21 イオンシネマ座間
| 監督 | フィル・ロード |
|---|---|
| クリストファー・ミラー | |
| 脚色 | ドリュー・ゴダード |
| 原作 | アンディ・ウィアー |
| 出演 | ライアン・ゴズリング |
|---|---|
| サンドラ・ヒュラー | |
| ライオネル・ボイス | |
| ケン・レウン | |
| ミラーナ・ヴァイントゥルーブ |

