●こんなお話
アメリカ人俳優が日本で頑張ってるうちにレンタル・ファミリー会社で働くことになる話。
●感想
アメリカ人俳優フィリップは、東京でオーディションを受けながら細々と生活している。かつて歯磨き粉のコマーシャルで一時的な注目を集めたが、その後は大きな仕事に恵まれず、貯金も底をつきかけている。将来の展望を描けないまま、日雇いの仕事を転々としている。
そんな彼に声をかけたのが「レンタル・ファミリー」という会社のオーナー、シンジだった。依頼者の求めに応じて家族や友人を演じるサービスを提供する会社で、外国人役の需要があると説明される。戸惑いながらも生活のために契約を結ぶ。
最初の依頼は葬儀で親族のふりをする仕事だった。現場に急いで向かうと、棺に入っていたのは依頼主本人で、生前に自分の葬儀を演出してほしいという契約だったと知る。戸惑いながらも役をこなして、参列して、場を成立させる。
次の依頼では、両親に結婚を認めてもらいたい女性のフィアンセ役を務める。女性は恋人の存在を隠しており、形式上の婚約者としてフィリップを紹介する。土壇場で逃げようとするが決意して、彼は相手の家族構成や過去の話題を必死に覚え、誠実な態度で振る舞う。
長期契約として、内気な少女ミアの父親役を引き受ける。母ひとみは、私立学校の面接で父親の存在が必要だと考えていた。実父は不在で、その事実をミアにどう説明するか迷っている。フィリップは学校行事に参加し、休日には一緒にお祭りやチームラボに行って過ごす。フィリップは、演技の枠を越えて責任を感じ始める。
同僚たちは謝罪代行や上司役など様々な役をこなしている。シンジ自身も家族との距離に悩みを抱えていることが示され、疑似家族の仕事が現実の人間関係と重なっていく。
フィリップは、かつて名を馳せた老俳優の取材役も担当する。認知機能が衰え始めたその俳優は、記憶が確かなうちに故郷の天草へ行きたいと願う。契約外の依頼だとして一度は断るが、思い直し、早朝に老俳優を連れ出して天草へ向かう。朽ちかけた実家に泊まり、庭に埋めたタイムカプセルを掘り起こす。中から初恋の女性の写真が出てきて、老俳優は静かに涙して、来られてよかったと感謝する。
しかし無断で連れ出したことが誘拐騒動として報じられ、フィリップは拘束される。会社の同僚たちが弁護士役や刑事役を演じて交渉にあたり、老俳優の意思が確認されて告訴は取り下げられる。事件を経て、フィリップは演技という仕事の意味を見つめ直す。
契約期間が終わりミアと別れるが、後日、ミアのもとを訪れる。彼は改めて自分の本名を名乗り、友人として向き合うことを選ぶ。演じることで始まった関係が、現実のつながりへと変わっていっておしまい。
葬儀、結婚、学校行事、地方都市への旅といった具体的な出来事を通して、日本社会における家族観や孤独を描いた作品でした。海外から見た東京の風景やテクノロジーとの距離感も自然に織り込まれ、文化の違いが物語に奥行きを与えています。
いくつもの依頼を順に描いていく構成は、連続ドラマのような味わいがありました。一話ごとに異なる依頼人が登場し、その背景が明かされることで、レンタル家族という仕組みが単なる奇抜な設定ではなく、社会の需要から生まれたサービスであることが浮かび上がります。
フィリップという異邦人の視点があることで、日本の家族制度や体面文化が客観的に見えてきます。演技と本心の境界が曖昧になる瞬間は繊細に描かれ、特にミアとの関係は静かな余韻を残しました。
老俳優との天草行きのエピソードも印象的でした。疑似的な取材が、本当の人生の締めくくりを支える行為へと変わる場面には温かさがあります。騒動を経てなお、人と人が向き合う可能性を示した点に心を動かされました。
派手な展開ではなく、日常の延長線上で物語が進みますが、他者の人生を演じることで自分自身を見つけていく過程が丁寧に描かれた作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2026/03/01 イオンシネマ座間
| 監督 | HIKARI |
|---|---|
| 脚本 | HIKARI |
| スティーブン・ブレイハット |
| 出演 | ブレンダン・フレイザー |
|---|---|
| 平岳大 | |
| 山本真理 | |
| 柄本明 | |
| ゴーマン・シャノン・眞陽 |

