●こんなお話
殺人鬼がライブ会場で自分が狙われていることに気づいて逃げようと頑張る話。
●感想
主人公のクーパーはフィラデルフィアの消防士として働き、家庭では娘ライリーを大切にする父親としての顔を持っていた。娘の成績優秀を祝うため、人気ポップスターであるレディー・レイヴンのコンサートへ足を運ぶ。華やかな会場に入ったクーパーは、異常なほどの警察とSWATの配備に気づく。やがて彼は、物販担当のジェイミーから、このライブ自体が「ブッチャー」と呼ばれる連続殺人犯を捕まえるための警察の仕掛けであることを知る。
しかしその正体こそ、クーパー自身であった。観客に交じりながら、自らが監禁している被害者スペンサーの映像を携帯で確認したりしつつ。従業員用エリアへ侵入し、無線を盗んで警察の動きを探ったり飲食エリアで火傷騒ぎを起こして警察の要員を探ったりして、周到に準備を進めていく。娘ライリーが夢見ていたステージ参加のチャンスを利用し、舞台裏へと進むことにも成功する。無邪気に喜ぶライリーの姿が、父の裏の顔との対比として印象的に映る。
コンサートが終わると、クーパーは逃走の困難さを悟り、ついにレディー・レイヴンへ自分がブッチャーであると告白。監禁中のスペンサーを人質に取る映像を見せ、要求に従わなければ命を奪うと脅す。レディー・レイヴンのリムジンを使って娘とともに脱出することを企むが、彼女は機転を利かせ、クーパーの家で事実を暴露しようと試みる。携帯を奪い浴室に閉じこもると、SNSを通じてスペンサーの居場所を明かし、結果的に彼の救出につながっていく。
クーパーはレディー・レイヴンを人質にとり、妻レイチェルと子供たちまで巻き込みながら、警察とFBIの包囲に挑む。偽のSWATの制服で逃走を図るも、リムジンはファンの群衆に阻まれ、レディー・レイヴンはその隙に脱出する。やがてクーパーの正体を妻レイチェルも知っていたことが明かされ、彼女はケーキに仕込んだ薬を最後の手段として夫に食べさせる。朦朧としたクーパーはFBIに逮捕されるが、輸送車内で自転車の部品を用いて手錠を外す準備を進め、不敵な笑みを浮かべておしまい。
ジョシュ・ハートネットは善良な父親の顔と冷徹な殺人鬼の顔を巧みに演じ分けており、普通の人間に見えるがゆえの恐ろしさが際立っていました。また、ライブ会場の高揚感や観客の熱気も見事に映し出されており、単なるスリラーで終わらない、バックステージものの面白さもありました。警察の包囲網をどう突破するのかという点も緊張感があり、鑑賞中は常にハラハラとした感覚を味わえました。
一方で、会場から脱出した後の展開はやや緩やかになり、序盤に描かれた娘のいじめ問題が本筋に絡むことはなく、やや冗長に感じられる場面もありました。ただし、全体としては最後まで楽しめる一作であり、満足度は高かった1作でした。
☆☆☆
鑑賞日:2025/09/21 U-NEXT
監督 | M.ナイト・シャマラン |
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脚本 | M.ナイト・シャマラン |
出演 | ジョシュ・ハートネット |
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アリエル・ドノヒュー | |
サレカ・シャマラン | |
ヘイリー・ミルズ | |
アリソン・ピル |