●こんなお話
ヤクザ同士で内輪もめをしていく話。
●感想
池元組長が本家から命じられ、兄弟盃を交わした村瀬組長の処遇をめぐって物語は始まる。村瀬は自らの傘下にある大友組に“汚れ仕事”を押し付けるように指示を出し、大友組員が村瀬組のぼったくりバーにわざと引っかかる形でトラブルを起こす。
一度は大人の対応で事態が収まるかに見えたが、村瀬組の若頭が恨みを抱き、大友組員を拉致・殺害。
その報復として村瀬組長は歯科医院で大友に襲撃され、引退を余儀なくされる。
大友組は外国大使館と手を結び、麻薬、風俗、闇カジノといった裏社会の利権を巧みに取り込みながら勢力を広げていく。一方で、表舞台から消えたはずの村瀬が再び麻薬ビジネスに関与していることが明らかになり、池元の命を受けた大友によって、村瀬はサウナで射殺される。しかしこの独断的な行動とされて上層部の逆鱗に触れ、会長は池元に詫びを求める。結果として、組織の秩序を乱した大友は破門される。命令されてやっただけなのに破門ということに怒りに燃えた大友は、ついに自らの手で池元を闇カジノで射殺。それを機に報復の連鎖が始まり、大友組は壊滅的な打撃を受ける。
仲間が一人、また一人と倒れていく中、大友は自らを守るため刑務所に入る道を選ぶ。外の世界では、組織の上層部が次々と血に染まり、最終的に会長と池元組の若頭が会長の若頭によって射殺される。その若頭が新たなトップとして座に就き、男たちの果てしない抗争の輪はまたひとつの形を取って静まっておしまい。
作品全体を通して、スーツに身を包んだ男たちの暴力が非常にスタイリッシュに描かれていました。発砲音や一瞬の沈黙、視線の交錯が緊張感を作り出し、死がいつ訪れるのか予測できない世界を淡々と映し出していたと思います。
内ゲバの連鎖を、どこかユーモラスに傍観できるような距離感もあり、冷たく乾いた暴力の中に奇妙なリズムがありました。
一方で、北野作品らしいバイオレンス演出の妙味を感じながらも、中盤以降のテンポの緩やかさに少し集中が途切れました。特に外国大使が関わる展開以降は、フェードアウトを多用した編集もあって、緊張が続かない印象を受けました。
銃撃戦も抑制的で、派手さよりも静かな余韻を残す構成になっていたものの、その淡白さが人によっては物足りなさにつながるかもしれません。
ただ、登場人物たちが次々に倒れていく中でも、組の力学が変わり続ける構図には不思議な面白さがありました。男たちの生き様というより、組織という無機質な存在が動く音を聴いているような感覚で、誰も勝者にならないまま、血と沈黙の中で関係だけが更新されていく。その不条理さを静かに見せつける北野監督の視線が印象的な作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2010/12/05 Blu-ray 2024/11/10 Blu-ray 2025/11/03 DVD
| 監督 | 北野武 |
|---|---|
| 脚本 | 北野武 |
| 出演 | ビートたけし |
|---|---|
| 三浦友和 | |
| 椎名桔平 | |
| 加瀬亮 | |
| 國村隼 | |
| 杉本哲太 | |
| 塚本高史 | |
| 石橋蓮司 | |
| 小日向文世 | |
| 北村総一朗 | |
| 中野英雄 | |
| 三浦誠己 |


