映画【破墓/パミョ】感想(ネタバレ):風水師&霊媒師が挑む壮絶ホラー

Exhuma
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●こんなお話

 代々長男だけ呪われる富豪一家のお墓を移動させたらお墓の幽霊から襲われる話。

●感想

 韓国からアメリカへ渡った「ムーダン(巫堂/霊媒師)」と呼ばれる二人組の主人公たちが、病院に入院中の赤ちゃんを診るところから始まります。その赤ちゃんは、代々「長男だけに不幸が続く」という呪われた富豪一家に生まれた子どもであり、主人公たちは家系にまつわる因縁を探るべく調査を開始します。赤ん坊の背後にある「墓地の風水が悪い」と判断し、韓国へと戻ることになります。

 一方、韓国では風水師と葬儀屋を営む別の主人公たちが、祖先の墓を改葬する作業を請け負っていました。掘り出した骨を通して、風水師が孫のいたずらを見抜いて、孫が涙ながらに謝罪したり。

 アメリカから帰国したムーダンたちは、この風水師と葬儀屋と合流し、富豪一家の事情を説明。「莫大な報酬」が提示され、再び墓を調査することになります。4人で現地へ赴いたところ、墓の状態が極めて不吉であると判明。風水師は依頼を断ろうとしますが、ムーダンの女性が「テサル」を提案し、火葬によって成仏させる計画が立てられます。

 儀式はジャンジャンと太鼓や楽器が鳴り響き、祭祀的な高揚感に包まれながら進みますが、予報になかった雨が降り出し、「雨天での火葬は凶兆」と判断した風水師が火葬を中止。棺は近くの火葬場に一時的に預けられます。ところが、病院の職員が興味本位で棺を開けたことから、事態は急転。棺から恐ろしい存在が解き放たれてしまいます。

 解放された祖父の幽霊は、認知症の息子を殺害し、孫にも憑依して命を奪うなど、次々と家族に災いをもたらします。祖父が生前、日本に財産を売却していた「親日派」であったことなども徐々に明らかになり、強い怨念を抱いたまま悪霊となっていたことが分かってきます。

 アメリカにいるひ孫の赤ちゃんにも魔の手が及びますが、主人公たちが急いで棺を火葬したことでなんとか撃退に成功。一度は解決を見たかに思われましたが、さらに事態は複雑化します。

 墓を掘り出した作業員が、その際に「蛇を殺したこと」が祟り体調を崩し、再度現地を調査すると、実は「重葬(複数の棺を重ねて埋めること)」であったことが判明。掘り出されたもう一つの棺はお寺に一時保管されますが、夜が明ける前に棺から異形の怪物が現れ、住職や周辺の人物が次々と命を奪われてしまいます。

 怪物の正体は、関ヶ原の戦いで討死したとされる日本の侍の怨霊。なぜ韓国に埋葬されているのかは明確に語られませんが、日本軍と朝鮮半島の因縁が暗示されるような描写も一部に見られます。

 主人公たちは、この侍の怨霊と対峙することになります。風水師と葬儀屋は、墓を封印している「鉄杭」を探し、同時にムーダンたちが陽動作戦を展開します。最終的には火の玉や怪物の猛攻を受けながらも、仲間の力を合わせて侍の怨霊を撃退することに成功します。

 激闘の末、瀕死となった風水師が走馬灯のようなビジョンを見る場面は感動的でしたが、最終的に病院で回復し、娘の結婚式に参列するシーンで物語はおしまい。

 本作は、「韓国版エクソシスト」とも呼べる内容で、霊媒師による伝統儀式や音楽・舞踊のシーンが非常に印象的です。楽器が鳴り響き、踊りが盛り上がっていく様子は、観ている側も自然とテンションが上がるようなトランス的な魅力に満ちています。

 また、憑依された人間が嘔吐したり、首があり得ない方向に曲がったりといった演出も、ホラーとしてのビジュアル面で非常にインパクトがあり、ジャンル映画としての完成度も高いと言えます。

 ただし、終盤に登場する「侍の幽霊」の設定に関しては、歴史的背景や時代の流れがやや曖昧で、関ヶ原で討死した武士がなぜ韓国に埋葬されているのか、といった疑問が残りました。一部の回想シーンに登場する日本兵や時代背景についても、やや消化不良な印象を受けました。

 上映時間は約130分とやや長めで、後半になるにつれて物語が複雑化し、暗めの画面構成やフラッシュバックの多用も相まって、やや眠気を誘うような冗長さを感じたのも事実です。

 とはいえ、憑依、除霊、悪霊との戦いという王道ホラーの要素と、韓国文化の風習や信仰を取り入れた描写、そして魅力的なキャラクターたちによるチームプレイが融合された見応えのあるエンタメ作品であることは間違いありません。

☆☆☆

鑑賞日:2024/10/27 イオンシネマ座間

監督チャン・ジェヒョン 
脚本チャン・ジェヒョン 
出演チェ・ミンシク 
キム・ゴウン 
ユ・ヘジン 
イ・ドヒョン 
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