映画【あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。】感想(ネタバレ):特攻隊員との絆と別れ――戦時下で心動かされるタイムスリップ青春譚

Till We Meet Again on the Lily Hil
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●こんなお話

 女子高生が母親に反発して防空壕で家出して外に出たら戦時中で特攻隊員たちと交流する話。

●感想

 物語は、主人公が学校で進路相談をしている場面から始まります。担任の先生は大学進学を強く勧めますが、主人公は経済的な理由から進学を諦めようとしており、その場に遅れて現れた母親に対して苛立ちをぶつけ、激しく罵倒してしまいます。さらには、亡くなった父親のことまでも否定的に口にする主人公に対し、母親は思わず平手打ちをしてしまいます。

 怒りと悲しみを抱えたまま、主人公は外にある古びた防空壕で一晩を明かします。翌朝、外に出ると風景が一変しており、街は戦時中の姿に戻っていました。ふらつく体で歩き続けるうちに倒れてしまい、通りかかった兵隊に助けられて近くの食堂へ運ばれます。時は1945年6月。突然の出来事に動揺する主人公ですが、やがて食堂で働くことを決意します。

 その食堂は、出撃を待つ特攻隊員たちの宿泊所にもなっており、主人公は次第に彼らと交流を深めていきます。食堂のおばさんに頼まれて、着物とお米を交換しに出かけた際には、空襲に遭遇し、街が焼け野原となる惨状を目の当たりにします。その混乱の中でも、親しくなった特攻隊員のお兄さんが主人公を救い出してくれます。

 彼は主人公に「妹のようだ」と親しみを込めて接してくれ、百合の花が咲く丘へと案内するなどの時間をともに過ごします。一方で、主人公は現代的な価値観から特攻という行為を否定的に捉えており、その考えを口にしてしまったために隊員たちの反感を買ったり、警官に咎められたりする場面も描かれます。

 やがて出撃の日が訪れ、特攻隊員のひとりと恋仲になっていた女性との切ない別れの場面なども挿入され、主人公は、未来の自分宛てに書かれた手紙を発見し、それを手に自転車で飛行場へ向かい、飛び立つ隊員たちを涙ながらに見送ります。そしてその瞬間、意識を失った主人公は、再び現代に戻ってきていました。

 後日、特攻隊記念館を訪れた主人公は、資料の中に自分宛ての手紙が展示されているのを発見し、その手紙を読みながら静かに感動の涙を流す…という形でおしまい。

 作品としては、タイムスリップというファンタジー要素を通して、戦争や特攻隊という重いテーマに向き合うきっかけを与えてくれる構成となっています。しかしながら、主人公が戦時中の世界に突然入り込んだ際の戸惑いや疑問があまり描かれておらず、比較的すんなりと受け入れてしまう様子には若干の違和感も残りました。

 また、序盤に描かれる母親への激しい罵倒や暴言のシーンがあまりに強烈であり、その印象が最後まで払拭されにくかった点も惜しまれます。

 とはいえ、空襲によって街が焼け野原になったシーンの映像表現は非常にリアルで、迫力と臨場感がありました。また、特攻隊という歴史の一端に触れるきっかけとして、この作品は有意義であり、視聴後に自ら歴史を調べたくなるようなテーマ性を持っていたことも評価すべき点です。

☆☆☆

鑑賞日:2024/10/01 Amazonプライム・ビデオ

監督成田洋一 
脚本山浦雅大 
成田洋一 
原作汐見夏衛 
出演福原遥 
水上恒司 
伊藤健太郎 
嶋崎斗亜 
上川周作 
小野塚勇人 
出口夏希 
坪倉由幸 
津田寛治 
天寿光希 
中嶋朋子 
松坂慶子 
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