●こんなお話
恋をすると鬼になるというヒロインと鬼を殺す仕事人の恋の話。
●感想
かつて“鬼殺し”と恐れられた鬼御門副長・病葉出門が、五年前の事件を境に組織を離れ、芝居小屋で人気を集める舞台役者として生きている姿から始まる。江戸の町では人に化けた鬼が潜み、鬼御門が密かに討伐を続けている。出門は刀を捨て、血とは無縁の世界で名声を得ていた。
ある夜、出門は盗賊まがいの一座を率いる女・つばきと出会う。彼女は舞台で妖艶な舞を披露し、同時に荒事にも躊躇しない強さを持つ存在だった。出門はその奔放さと孤独を帯びた横顔に惹かれていく。つばきは五年前に川辺で倒れていたところを助けられ、それ以前の記憶を失っている身だった。
一方、江戸では再び鬼による惨殺が続発する。鬼御門の現副長・安倍邪空は鬼の復活を予見し、暗躍を始める。鬼女・美惨も動き出し、鬼たちはある存在の覚醒を待っていた。やがて明らかになるのは、つばきこそ鬼の王であるという事実だ。真実の恋に落ちたとき、阿修羅は完全に目覚める宿命を背負っている。
出門への想いが深まるにつれ、つばきの中で鬼の力が膨れ上がる。ついに江戸上空に巨大な阿修羅城が出現し、町は炎と混乱に包まれる。鬼御門は総力戦に突入し、出門も再び刀を握る。愛する女を救うため、彼は空中に浮かぶ城へと乗り込む。
城内では邪空や美惨との激闘が繰り広げられ、出門は鬼を斬り伏せながら最上階へ向かう。玉座に立っていたのは、阿修羅として覚醒したつばきだった。理性と本能の狭間で揺れる彼女と出門は刃を交える。城は崩壊を始め、炎が二人を包み込む。
出門は最後に刀を捨て、つばきを抱きしめる。鬼としてではなく一人の女として生きてほしいと願い、彼女の中の鬼を断ち切ろうとする。炎の中で二人は互いを想いながら姿を消し、阿修羅城は崩れ落ちて、江戸の空に静けさが戻っておしまい。
菅野よう子さんの音楽が流れる中で始まる冒頭の鬼退治は、映像と音が一体となった迫力に満ちています。鬼御門の面々が人間に紛れた鬼を斬り伏せる場面は、緑色の血しぶきや大胆な立ち回りも相まって強烈な印象を残します。時代劇とファンタジーを融合させた世界観は独特で、舞台原作らしい絢爛さが画面いっぱいに広がります。
物語の中心は、鬼御門を辞めた男と正体不明の女との恋にあります。二人の距離が縮まっていく過程が物語の軸ですが、恋に落ちる瞬間の説得力については好みが分かれるところかもしれません。舞台劇のテイストを色濃く残した台詞回しや演技は熱量が高く、映像作品としてはやや過剰に感じられる場面もありますが、その演劇的様式美を楽しめるかどうかで印象が変わると思います。
後半、つばきの正体が明かされてからは一気に幻想色が強まり、登場人物たちの行動原理も宿命や情念に支配されていきます。怒涛の殺陣が続くため、剣戟の迫力を堪能できる一方で、やや食傷気味に感じる方もいるかもしれません。それでも、愛と破滅を正面から描こうとする姿勢には強いエネルギーがあります。
悲恋として見るか、伝奇アクションとして味わうかで評価は分かれますが、舞台的誇張と映画的スケールがぶつかり合う唯一無二の作品であることは確かな1作だと思いました。
☆☆
鑑賞日:2013/10/18 Hulu 2026/03/04 U-NEXT
| 監督 | 滝田洋二郎 |
|---|---|
| 脚本 | 戸田山雅司 |
| 川口晴 | |
| 原作 | 中島かずき |
| 出演 | 市川染五郎 |
|---|---|
| 宮沢りえ | |
| 大倉孝二 | |
| 皆川猿時 | |
| 樋口可南子 | |
| 土屋久美子 | |
| 韓英恵 | |
| 小日向文世 | |
| 内藤剛志 | |
| 渡部篤郎 | |
| 沢尻エリカ |


