●こんなお話
ヤクザにカラオケを教えることになった合唱部員とヤクザの話。
●感想
土砂降りの雨の中を一人歩くヤクザの姿から始まります。ふと気がつくと、合唱コンクールの会場の近くまで来ており、そこで三位という結果に終わり悔しさを噛みしめる中学生たちと交差します。コンクール後、主人公が忘れ物を取りに戻ると、目の前に現れたのはそのヤクザ。「カラオケに行こう」と突然誘われる。
ヤクザに連れられて訪れたカラオケボックスでは、ヤクザ自身の歌を聴いてアドバイスをしてほしいと頼まれます。その理由は、組長の誕生日に開催されるカラオケ大会で最下位になってしまうと、下手な入れ墨を彫られるという罰があるため、何としてでも避けたいというもの。主人公は選曲の問題点や裏声の使い方など、真剣にアドバイスを行います。
やがて、ヤクザたちは主人公の中学校にまで現れ、次々とカラオケの相談を持ちかけてきます。主人公は、「一人のヤクザだけなら」と条件を出しつつも、次第に巻き込まれていきます。一方で、主人公は声変わりの時期にさしかかり、ソプラノとしての歌声もこれが最後だと自覚するように。合唱部では、後輩たちにもっと真剣に取り組まなければ優勝はできないと訴える場面もあったり。
また、映画鑑賞部でVHSの古い映画を観るシーンや、両親が奇妙なアイテムを買ってくるなど、主軸とは異なる日常描写も多数挟まれ、少々冗長に感じられる部分も。
物語は、合唱コンクールとヤクザのカラオケ大会が同日に重なることが判明し、クライマックスへ。コンクールに向かっていた主人公は、カラオケ店の前でヤクザが事故に遭い、救急車で運ばれる場面に遭遇。ショックを受けた主人公はコンクールを離れ、カラオケ大会の会場へと急行し、感情を込めた熱唱を披露する。ヤクザたちはその歌に感動し涙しますが、実は死んだと思われていたヤクザは無事で、「生きてましたー」と再登場します。
このクライマックスは、ギャグとして描かれているのでしょうが、唐突な展開にやや戸惑いを覚えたのも事実で。リアリティを求める作品ではないと承知の上でも、ドラマとしての盛り上がりには若干の肩透かしを感じました。
また、主人公の両親や映画鑑賞部のエピソードが本筋から大きく逸れており、退屈に感じる部分も散見されました。
それでも、中学生とヤクザという異色の組み合わせは非常にユニークで、そのギャップから生まれるコメディ要素は見どころの一つだと思います。ただし、出オチ的なインパクトに頼る展開が目立ち、作品全体としてはその勢いを最後まで持続できていなかったように感じられました。
☆☆☆
鑑賞日:2024/08/06 NETFLIX
監督 | 山下敦弘 |
---|---|
脚本 | 野木亜紀子 |
原作 | 和山やま |
出演 | 綾野剛 |
---|---|
齋藤潤 | |
芳根京子 | |
橋本じゅん | |
やべきょうすけ | |
吉永秀平 | |
チャンス大城 | |
RED RICE | |
八木美樹 | |
後聖人 | |
井澤徹 | |
岡部ひろき | |
米村亮太朗 | |
坂井真紀 | |
宮崎吐夢 | |
ヒコロヒー | |
加藤雅也 | |
北村一輝 |