●こんなお話
子どもが行方不明になって探し続ける家族の話。
●感想
子どもと幸せそうに遊ぶ描写から物語は始まる。だが、その後すぐに街で子どもが行方不明になり、主人公は情報提供を求めるチラシを必死に配り歩く。その様子を地元静岡のテレビクルーが取材していた。
テレビ局の上司から「前回と変化がない」との指摘があり、進展を求める意向で、子どもと最後に一緒にいた弟への取材を命じられる。弟は明らかに嫌がっていたが、やむなく話を聞きに行く。しかし弟の挙動が不審に見えたことで、近所の人々から疑われ騒動となり、職場の社長にも世間体を気にされる。
一方で主人公自身も、子どもがいなくなった当日アイドルのライブに行っていたことがネット上で非難され、激しい誹謗中傷にさらされる。さらに弟の証言が嘘だったことが発覚し、主人公は彼との関係を絶つ決断をする。夫もまた、職場から募金を受け取りながらチラシの印刷費用をやりくりするなど、経済的にも精神的にも追い詰められていく。
そんな中、「子どもが保護された」と警察を名乗る人物から連絡が入るが、それは悪質な嘘の電話だった。空振りの末、主人公の心が折れてしまったり。
月日は流れ、2年が経過しても子どもは見つからない。それでも主人公たちは情報提供を呼びかけ続けている。周囲では日常が続いていくなか、地元で新たに別の子どもが行方不明になる事件が起こる。主人公は、自分の娘もその近くにいるかもしれないという思いから、その子の情報提供を呼びかける活動にも力を注ぐ。
一方で、弟も仕事中に怪しい男を目撃し、その家をのぞき見しているところを近所の人に見つかり暴行されてしまう。迎えに来た主人公に「娘に会いたい」と謝り、後日、主人公からはかつて子どもと弟が仲良く遊んでいた動画が送られてくる。
新たに見つかった行方不明の子どもは、主人公の娘とは無関係だった。それでも活動を続ける主人公のもとに、その子の親が感謝を伝えに現れる。主人公の夫はその姿に涙を流す。そして、かつて主人公たちをネットで誹謗中傷した人々に対して裁判が起こされたことが報道される。主人公は小学生の登校を見守る旗当番として子どもたちを見送りながら静かにおしまい。
子どもが行方不明になるという重く辛いテーマを扱いながら、マスコミとの関係や世間の目、家族の崩壊、支援の限界など、多くの現実を丁寧に描いていたと思います。音楽がほとんどない中、印象的にアイドルの楽曲が流れる場面が強く印象に残った作品でした。終始心に重くのしかかるが、目をそらせない強さを持った一本でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2024/05/25 イオンシネマ座間
監督 | 吉田恵輔 |
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脚本 | 吉田恵輔 |
出演 | 石原さとみ |
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青木崇高 | |
森優作 | |
小野花梨 | |
細川岳 | |
有田麗未 | |
小松和重 | |
カトウシンスケ | |
山本直寛 | |
柳憂怜 | |
美保純 | |
中村倫也 |