●こんなお話
1909年くらいから1945年くらいまでの主人公の波瀾の人生の話。
●感想
少女時代の主人公には妹がいて、彼女はまだ14歳くらいで、すでに2人目の子どもを妊娠しているというショッキングな始まり。出産した直後、赤ん坊は父親によって引き離され、主人公は深く傷つく。その後、妹に声をかけてきた男性と父親との間で交渉が行われ、主人公は本人の意思に関係なく強制的に嫁に出されてしまう。
嫁いだ先では、夫は馬で移動する一方で主人公は徒歩。家事全般を押しつけられ、「疲れて無理」と口にしただけで殴られる日々が始まる。夜の相手も強制され、心身ともに追い詰められていく。
ある日、妹が訪ねてくる。父親から襲われたため逃げてきたという。夫は「働くなら」と同居を許すが、実は最初から妹に好意を抱いていた夫は、襲おうとして拒絶され逆上。妹を家から追い出し、主人公に「毎日手紙を書くように」と約束させるが、郵便受けは夫の管理下にあり主人公は読むことすらできない。
時が経ち、義理の息子が恋人を連れて現れる。彼は自立しており、夫と対等にぶつかる姿に主人公は少なからず影響を受ける。その後、有名な歌手となって地元に帰ってきた女性が主人公の家に泊まり、彼女の自由な生き方にも主人公は刺激を受けるようになる。
夫とその父親は典型的な父権社会の象徴のような存在。だが、実父の死をきっかけに家を飛び出した主人公は、父の遺したお店を受け継ぎ、衣料品店を自らの力で経営していく。ついには成功を収め、離れ離れになっていた妹とも再会。さらに、長年会えなかった子どもとも再び繋がり、すべてを許して物語はおしまい。
別の惑星のように感じるほど自由や選択が奪われた世界の中で、ひたすら虐げられる主人公の人生は、とにかくヘヴィーでつらいです。それでも、彼女はユーモアと歌によって自分を保ち、広い世界を知ることの大切さを伝えてくれます。差別に苦しめられた者が他者を差別するという構造にも直面し、苦しみの連鎖がリアルに描かれてると思いました。
物語が進んで主人公が成長したあたりから、登場人物や人間関係が少しずつ理解できるようになり、ようやく話に入り込めるようになりました。だが冒頭は人物相関がつかみにくく、誰が誰の親で姉妹なのかが分かりづらく、正直退屈に感じてしまいました。140分を見終えても、夫(ミスター)のことはどうしても許せず、物語上では許されていたけれど、自分にはあの寛容さは持てないと気づかされる一本でした。
☆☆☆
鑑賞日:2024/02/11 イオンシネマ座間
監督 | ブリッツ・バザウレ |
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脚本 | マーカス・ガードリー |
原作 | アリス・ウォーカー |
出演 | ファンテイジア・バリーノ |
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タラジ・P・ヘンソン | |
ダニエル・ブルックス | |
コールマン・ドミンゴ | |
コーリー・ホーキンズ | |
ガブリエラ・ウィルソン “H.E.R.” | |
ハリー・ベイリー |