●こんなお話
ナイキ社がマイケル・ジョーダンと契約しようと頑張る話。
●感想
1984年のアメリカを映したフッテージの数々とともに始まる物語。カセットテープがまわり、ヘアスタイルも服装も今とは違う時代。MTVや大統領の演説、時代の空気が映像で流れ込んでくるようなオープニング。そこから、当時のバスケットシューズ業界の勢力図が描かれていく。アディダス、コンバースといった強豪ブランドに比べて、ナイキはまだバスケットボール部門では存在感を持てていなかった。
その中で登場するのが、主人公のサニー。彼はナイキの社員として、高校生バスケット選手の才能を探し続けるスカウトマン。いろいろな試合をチェックしては、これはという若者を見つけてくる。そんなある日、彼が目を止めたのが、当時はまだ無名だった若きマイケル・ジョーダンだった。スカウト用のビデオテープを繰り返し再生し、彼の動きを見つめるサニー。その眼差しは確信に満ちていた。
ナイキ社内では、バスケット部門の予算配分をめぐって会議が続く。限られた予算の中、どの選手に投資するか、誰と契約するかという議論が続く中、サニーは強く主張する。ジョーダンに全予算をかけるべきだ、と。社内では反対意見も多く、説得する相手は一人や二人ではない。けれども、サニーは諦めず、1人ずつに話しかけ、自分の考えを伝えていく。ときに口論になりながらも、少しずつ仲間を味方に引き込んでいく様子が描かれていく。
そして、サニーは正攻法ではない手段に出る。通常は代理人を通すことが当たり前のビジネスの中で、彼は直接ジョーダンの実家を訪ねる。母親に面会し、彼の魅力とナイキのビジョンをまっすぐに語りかける。代理人は当然ながら激怒するが、それでもサニーは止まらない。大手ブランドが次々にジョーダン一家にプレゼンを仕掛ける中、ナイキも独自のアプローチを準備していく。
いよいよ迎えるプレゼン当日。社内で綿密に組み立てたプランを背にして始まった説明だったが、サニーは途中であえて計画を逸脱し、自分の言葉で話し始める。その場で思いを語る演説は、飾り気のない真剣な想いに満ちていた。母親はその熱意を受け止めつつ、シューズの売り上げからの分配というこれまでにない条件を提示する。そしてナイキは、それを受け入れる決断を下す。
こうして、若きマイケル・ジョーダンがナイキと契約を結び、後の「エア・ジョーダン」伝説へとつながっていく物語はおしまい。
全体として、ひとつの目標に向かってまっすぐ進む主人公の姿が描かれていて、お仕事映画としてとても気持ちよく観ることができました。反対されながらも信念を持ち続け、相手の懐に飛び込んでまで信じる道を貫く姿には勇気をもらえました。
ただ、非常にテンポの速い会話劇が続くので、ぼんやりと観ているとすぐに置いていかれる構成だったのも印象的でした。会話のひとつひとつがテンポよく、それでいて重みもあるので、常に集中して観ていたくなる作品だったと思います。俳優陣の芝居も力強く、立ち話や会議のシーンが多くても飽きずに引き込まれる力があったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2023/06/11 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ベン・アフレック |
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脚本 | アレックス・コンベリー |
出演 | マット・デイモン |
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ベン・アフレック | |
ジェイソン・ベイトマン | |
クリス・メッシーナ | |
マーロン・ウェイアンズ | |
クリス・タッカー | |
ヴィオラ・デイヴィス |