映画【ヴェノム】感想(ネタバレ):寄生生物と共に戦う、異色のヒーロー譚

venom
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●こんなお話

 マーベルコミック原作の【ヒドゥン】とか【寄生獣】みたいな話。

●感想

 主人公は、正義感にあふれるというよりは、やや頼りなさや生活感が滲み出るタイプの男性。そんな彼がある日、企業の陰謀に巻き込まれて仕事を失い、恋人とも気まずくなり、路上のホームレスと語り合ったりしながら物語が進行していく。序盤は、ヒーローものというジャンルにしては珍しく、変身や戦闘に至るまでの過程が丁寧に描かれているが、その分やや長く感じる構成。

 そんな中で、主人公が謎のスライム状の生命体に寄生される展開がようやく始まる。寄生されてからの変化は急激で、これまでの冴えない印象から一転して、サンフランシスコの夜の街をバイクで駆け抜けるチェイスシーンへと繋がっていく。この一連のアクションには映像的な迫力があり、特に夜の街を縦横無尽に駆ける疾走感は目を引くものがありました。

 物語の後半になると、ヴェノムという存在が主人公に完全に寄生し、彼を操る形で様々な戦闘が繰り広げられていきますが、このヴェノムという存在がなぜ他の人間ではうまく寄生できないのか、なぜ主人公だけが受け入れられるのかといった部分の説明があまり語られないまま展開が進んでいきます。さらに、終盤ではその設定が揺らぐような描写もあり、他の人間にも寄生できている様子が描かれていたため、少し混乱を覚える流れとなっておりました。

 対する敵役も、巨大企業のトップという立ち位置ながらもキャラクター性に厚みがあるとは言いがたく、いつの間にか彼もまた寄生生物に取り込まれており、クライマックスでは夜の闇の中で似たようなビジュアルのキャラクター同士がもみ合うという場面が展開されていきます。画面全体が暗く、アクションの動きも似通っていたため、見分けがつきにくいシーンが続いた印象です。

 物語を通して、主人公の人間的な葛藤や、寄生生物との関係性が掘り下げられる一方で、登場人物の行動原理や状況設定にはやや疑問が残る部分もありました。特に敵役がいきなり無人のラボに現れる場面などは、物語的に唐突さが際立ち、少し現実味に欠ける演出だったように感じます。

 全体として、アクションのテンポや映像美において見どころは多く、CGを駆使したアクションや、寄生後の主人公の変化を描くパートには引き込まれるものがありました。ただ、これまで数多く作られてきたマーベル作品群の中で、なぜこの物語が今語られるのかという点には、少し立ち止まって考えてしまうような一面もありました。

☆☆

鑑賞日: 2018/11/08 TOHOシネマズ川崎 2020/02/20 WOWOW

監督ルーベン・フライシャー 
脚本スコット・ローゼンバーグ 
ジェフ・ピンクナー 
ケリー・マーセル 
出演トム・ハーディ 
ミシェル・ウィリアムズ 
リズ・アーメッド 

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