映画【ドミニオン】感想(ネタバレ):静かな恐怖と信仰の崩壊──悪魔と対峙する神父の葛藤を描く心理ホラー

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●こんなお話

 英国領の東アフリカでキリスト教の遺跡が発掘されて近くの村人たちが酷いことになっていく話。

●感想

 ナチス占領下、主人公の神父は民衆の前で「この中に泥棒がいる」と告発され、犯人を指さすように命じられる。拒否する神父だったが、1人がその場で射殺され、さらに「言わなければ10人を殺す」と脅されてしまう。どうしようもなく指さすと、再び銃声が響き渡る──。

 時は少し進み、物語の舞台は英国領時代の東アフリカへ。発掘された遺跡に興味を持った考古学者である主人公は、そこへ赴くことになる。村では若い神父が学校で現地の子どもたちに教育を行い、村人たちは「遺跡を掘り起こすな」と強く警告してくる。

 村の少年が重い病気にかかり、それを助けたことで、主人公は医師の女性と知り合う。一方で、掘り出された遺跡はキリスト教の古い教会のようでもあり、何かを封印しているような不気味さがある。

 奇妙な現象も起き始める。牛がハイエナを襲って食べたり、病気の少年の骨には外科的な処置がなされていたり、酋長の妻が出産するも死産になるなど、どこか不穏な空気が流れていく。

 そのうちに、元気になった少年が突然冷たい表情になり、若い神父が「ささやき」を聞いたことで、少年に悪魔が取り憑いている可能性が浮かび上がる。盗掘を試みた英国軍人が変死し、軍の少佐は犯人を現地の住民と決めつけ、少女を射殺してしまうという事態にまで発展。

 さらには「キリスト教が悪い」と言い出した村人が学校で子どもを殺す事件も起きてしまう。混乱が続く中、少年に洗礼を施そうとした神父がサタン化した少年に襲われて逃走。医師の女性も建物に閉じ込められてしまう。

 主人公は女医を救出するために悪魔と対峙するが、過去の記憶を見せられる夢のようなシーンが展開される。いったん引き下がった主人公は、神父としての法衣を身にまとい、再び少年のもとへ。悪魔祓いの儀式を行い、サタンを追放することでようやく事態は収束する。

 物語全体を通して、植民地支配の残酷さ、宗教がもたらす光と影、そして「祈り」や「信仰」がいかに無力になりうるかというテーマが描かれていて、重苦しいながらも印象に残る作品でした。

 ただし、話の舞台はずっと小さな村の中に限定されていて、派手な展開や大きなスケールの映像は少なく。中盤までは地味な会話劇と謎めいた出来事が続き、ややテンポが悪く退屈に感じる部分もありました。終盤にいきなり主人公が悪魔祓いに挑む展開が訪れますが、それまでの積み上げに比べるとクライマックスはやや唐突で、盛り上がりきらない印象も残りました。

 とはいえ、宗教や歴史、戦争の影を重ね合わせながら、静かな恐怖と精神的な葛藤を描いた一作として、観る人によっては深く刺さる内容だったと思いました。

☆☆☆

鑑賞日:2022/12/16 NETFLIX

監督ポール・シュレイダー
出演ステラン・スカルスガルド
ガブリエル・マン
クララ・ベラール
アントニー・カメルリング
ジュリアン・ワダム
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