映画【竹取物語】感想(ネタバレ):月からの来訪者と美しき姫の運命を描く幻想譚

The Princess from the Moon
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●こんなお話

 竹から生まれた女の子を育てて貴族の男たちに求婚されたりしつつ月に帰っていくまでの話。

●感想

 娘を失って以来、静かな悲しみを抱えて暮らしていたある夫婦のもとに、ある晩、異変が訪れる。夜の帳が下りた頃、外の竹林がまばゆい光に包まれ、やがてその一帯が炎に包まれる。心配になった夫が様子を見に行くと、娘の墓の近くで、奇妙な金属の塊が光を放っていた。近づいてみると、その中から赤ん坊が現れ、見る間に少女の姿へと成長する。

 自分たちの娘にあまりに似ているその少女に、妻は強い衝撃を受ける。そして夫婦は迷うことなく彼女を自分たちの子として育てていくことに決める。赤ん坊が包まれていた金属は純金でできており、それを売ったことで夫婦は大金を手にし、やがて豪奢な屋敷を建てて暮らすようになる。少女は美しく成長し、人々から“かぐや姫”と呼ばれ、その評判は朝廷にまで届くこととなる。

 その美しさに心奪われた天皇の側近たちは、次々と求婚を申し出る。かぐや姫は応じる代わりに、伝説に語られる秘宝を持ってくるようにと告げる。求婚者たちは難題に挑むふりをしながらも、多くが偽物を持ち帰り、すぐに見破られてしまう。だが一人、若き大納言だけは本当に天竺を目指して旅立つ。やがて彼が怪獣のような存在に襲われ、海に沈んだという知らせが届くと、かぐや姫はひどく落ち込み、心を閉ざすようになる。

 その矢先、かぐや姫が大切にしていた水晶玉が輝き、彼女の中に過去の記憶がよみがえる。自分は月の世界から来た存在で、やがて迎えが来る運命なのだと、両親に打ち明ける。突然のことに驚き戸惑う夫婦だったが、娘のように育ててきたかぐや姫の言葉を信じ、静かに受け入れていく。

 数か月後、沈没したとされていた大納言が傷だらけの姿で戻ってくる。彼はかぐや姫の言葉を信じ、再び彼女の前に現れる。天皇たちはかぐや姫の「月の出身」という話に懐疑的だったが、大納言だけはその言葉を深く信じていた。

 そして迎えの夜。満月が空を照らす中、空から巨大な円盤型の宇宙船が降下してくる。弓矢を放つも届かず、誰の力もおよばない。やがてかぐや姫は静かに歩を進め、両親や大納言との別れを惜しみつつ、宇宙船の扉の奥へと姿を消す。残された人々はただ空を見上げ、思いを馳せることしかできなかった。

 物語の大枠は、かぐや姫として広く知られている筋書きでしたが、そこに月や宇宙船といったSF的要素が加わることで、どこか昭和の特撮作品を彷彿とさせる映像体験となっておりました。衣装や美術の豪華さは目を見張るものがあり、舞台セットの細部にも時代劇らしい重厚さが感じられ、さすがの大作と感じました。

 三船敏郎さん演じる人物が、竹林の中で状況を説明するような独り言を繰り返す冒頭シーンは、その存在感も含めてユーモアがあり、思わず笑みがこぼれました。また、天皇周辺の人物たちを演じる俳優陣の堂々とした芝居も見応えがあり、作品全体の格調高さを支えていたように思います。

 ただ、物語の展開としては、やや決まりきった流れに沿っている印象も否めず、盲目の子守といった登場人物がもう少し有機的に物語に関わっていれば、より深みが増したのではと感じました。クライマックスの宇宙船の登場によって一気に物語が跳ね上がるのは非常に魅力的でしたが、それ以外の部分でもうひと工夫あると、さらに心に残る一作になっていたかもしれません。

 それでも、時代劇とSFを大胆に融合させたこの作品は、今となってはなかなか見ることのできない貴重な映像体験だったと感じております。懐かしさと新しさが同居する不思議な空気感を味わえる一本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2023/04/09 WOWOW

監督市川崑 
特技監督中野昭慶 
脚本菊島隆三 
石上三登志 
日高真也 
市川崑 
出演三船敏郎 
若尾文子 
沢口靖子 
石坂浩二 
中井貴一 
春風亭小朝 
竹田高利 
小高恵美 
中村嘉葎雄 
伊東四朗 
常田富士男 
加藤武 
岸田今日子 
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