映画【きさらぎ駅】感想(ネタバレ):主観視点で描く“神隠し”体験。異世界でのサバイバルを描いた注目作

Kisaragi Station
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●こんなお話

 謎の駅に乗り過ごした人たちが恐怖体験をして、その話を聞きとる大学生が同じ体験をする話。

●感想

 大学で民俗学を専攻している主人公の青年が、卒業論文のテーマとして“神隠し”を選び、都市伝説として知られる「きさらぎ駅」に関する情報を集める過程で、とある一軒家を訪ねる。そこに住んでいる女性は、かつて若い頃に実際にきさらぎ駅に行ったことがあると語り始める。

 彼女の話によると、当時、電車でうたた寝をしているうちに見知らぬ駅に降り立ってしまい、そこには自分と同じように混乱している複数の男女が集まっていたという。状況も場所も理解できない中で、突如として現れた異形の存在――ミミズのようにくねくねと蠢く生き物や、顔が膨張して破裂する人間、あるいは爆発する老人など、常識では説明のつかない出来事が次々と襲いかかってくる。生き残ろうと必死に逃げる彼らだったが、一人また一人と姿を消していく中、彼女は謎のゲートのような空間にたどり着く。他に生き残っていた女子高生を置いて、自分一人だけそのゲートをくぐり抜けて、気がつけば現実の世界へ戻っていたという。

 この体験談を聞いた主人公は、彼女と同じ状況を再現するため、語られた通りの手順を踏んで列車に乗る。そして再び目覚めたとき、そこはあの“きさらぎ駅”だった。さらに驚くべきことに、同じ電車には先ほど女性が話していた人物たちがそのまま乗っており、まるで一度見た映像を繰り返しているような感覚に陥る。主人公は、事前に聞いていた話を手がかりに、彼らの運命を変えるために行動を開始する。特に女子高生を助け出すために、前回とは異なる選択を取りながら奔走する。

 やがて女子高生が危機に瀕し、主人公は彼女を先にゲートに向かわせ、自らは後ろに残ることを選ぶ。女子高生がゲートを通過しようとした瞬間、空に大きな瞳が現れ、じっとこちらを見下ろしている。彼女はそのまま現実世界へ戻ってくるが、後に語られるのは、「ゲートを通れるのは一度に一人だけだった」という事実だった。主人公は戻ってこなかった。

 本作は、一貫して主観映像によって語られていく演出が印象的で、まるで一人称視点のテレビゲームを見ているような感覚に陥ります。人物たちの動きや、異形の存在が現れた際の映像処理、特に顔面がパンッと破裂したり、ミミズ状のものがうごめいたりする描写は、恐怖よりもややユーモラスに映ってしまう部分もあり、ホラーというよりはブラック・コメディ的な味わいを感じる場面も多くありました。

 また、物語の構造自体がタイムループものとして構成されており、最初に聞いた情報を基に、主人公がその場の状況に「攻略法」を持ち込むという展開になっていたのもユニークです。ゲーム的とも言える展開の中で、物語の世界観とルールを把握し、わずか一度の聞き取りだけで仮説を立て、再現行動を起こした主人公の行動力と理解力には目を見張るものがありました。

 実在する都市伝説を題材にしたホラーながら、どこか現実離れした演出の数々と、独特の映像トーンが相まって、ただ怖がらせるだけでなく奇妙なユーモアを滲ませる作風が特徴です。観客としても、いかにしてこの異常な空間から脱出するかという「ゲーム感覚」をもって楽しめる構成となっており、ホラーとファンタジーの中間のような一本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2023/02/04 WOWOW

監督永江二朗 
脚本宮本武史 
出演恒松祐里 
本田望結 
莉子 
寺坂頼我 
木原瑠生 
瀧七海 
堰沢結衣 
芹澤興人 
佐藤江梨子 
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