●こんなお話
湾岸署引っ越しの最中に拳銃盗難事件が発生してそれで殺人が起こって脅迫されちゃう話。
詳細ネタバレあらすじ
新湾岸署の開署式まで3日となり、湾岸署では新庁舎への引っ越し作業が進められていた。強行犯係係長に昇進した青島俊作は、篠原夏美や和久伸次郎らとともに引っ越し作業にあたっていた。大量の荷物を運び出しながら、署員たちは新しい湾岸署への移転準備を進めている。
そんな中、管内で金庫破りやバスジャックなどの事件が相次いで発生する。しかし、金庫破りでは金庫が開けられたにもかかわらず現金が持ち去られず、バスジャックでも犯人は乗客から何も奪わずに立ち去る。通常の強盗事件とは異なる事件が続く中、さらに湾岸署から拳銃3丁が盗まれていることが判明する。
そして健康診断の結果、青島が難病である可能性が示唆される。
盗まれた拳銃の一丁が殺人事件に使用され、さらに別の拳銃も事件に使用されたことで、警察は本格的な捜査を開始する。警視庁からは鳥飼誠一が管理補佐官として湾岸署に入り、青島とともに事件を追うことになる。
その後、インターネット上に「ノライヌ」と名乗る人物が現れ、事件への関与を示す書き込みを行う。ノライヌは、これまで青島が逮捕した9人の犯罪者を解放するよう警察に要求する。要求を受け入れなければ、盗んだ拳銃や新湾岸署に仕掛けたものを使うと警告する。
要求された9人のうち、田中文夫、岩瀬修、現金輸送車強奪犯、柏田郁夫、坂下始はすでに刑期を終えて出所していた。野口達夫は収監中だったが精神状態を理由に釈放対象から外され、鏡恭一も釈放を拒否する。そのため、実際に釈放の対象となるのは日向真奈美と増田喜一の2人となる。
捜査では、日向真奈美のファンサイトが重要な手掛かりになる。サイトには、日向の健康状態など、日向の近くにいる人物でなければ知ることが難しい情報が書き込まれていた。警察が日向の周辺を調べた結果、関東中央医療刑務所で日向を担当していたソーシャルワーカーの須川圭一が浮上する。須川は日向の担当を離れた後、インターネット上で「ノライヌ」を名乗っていた。
青島、鳥飼、木島丈一郎らは須川の自宅を捜索する。室内にはトランスポーターの制服、白い箱、日向真奈美の写真、日向に宛てた手紙などが置かれていた。さらに鳥飼が須川のノートパソコンを調べたところ、仕掛けられていた爆発物が作動し、鳥飼が負傷する。
一方、警察は新湾岸署への攻撃を警戒する。鳥飼は新湾岸署のセキュリティを最高ランクに設定するよう指示するが、そのセキュリティシステムには須川側によって細工が施されていた。警察がセキュリティを強化した結果、新湾岸署の扉や設備が正常に作動しなくなり、署員たちは建物の中に閉じ込められる。
さらに須川側から、新湾岸署に高濃度の毒ガスを仕掛けたという連絡が入る。要求した犯罪者を解放しなければガスを噴出すると警告され、警察は対応を迫られる。
室井慎次は犯罪者の釈放について判断を求められる。警察側では、要求された人物を新湾岸署へ移送し、釈放したうえで犯人側の要求を満たし、最終的に身柄を確保する計画が進められる。鳥飼は釈放した犯罪者を射殺する案まで提示する。青島の診断は間違いだったことも判明して、青島たちは動きだす。
釈放対象となった日向真奈美と増田喜一は、それぞれ護送車で移送される。日向の護送車には青島が同乗する。一方、増田を乗せた護送車は道路の渋滞に巻き込まれ、指定された時間までに到着できなくなる。その結果、増田の釈放は実行されず、刑務所へ戻される。
新湾岸署では和久伸次郎が毒ガスへの対処を行う。署内にガスが流れ込むものの、人体に危険のあるガスではないことが判明する。さらに、封鎖された新湾岸署から脱出するため、セキュリティシステムを複雑に解除するのではなく、電源そのものを落とす方法が取られる。ブレーカーを落とすことでシステムが停止し、署員たちは建物から出られるようになる。
その頃、栗山孝治は日向真奈美のファンサイトを調べ、犯人側が知っている情報を書き込んでいる人物を追跡する。書き込みから発信元を特定し、須川圭一たちの潜伏場所が判明する。篠原夏美、緒方薫、王明才らが現場へ向かい、須川たちを確保する。
須川たちが逮捕された一方、日向を乗せた護送車は羽田空港へ向かっていた。しかし日向は空港へ向かうことを拒否し、青島に別の場所へ連れて行くよう求める。日向が指定した場所は、かつて自分が逮捕された旧湾岸署だった。
青島は日向を連れて旧湾岸署へ向かう。旧湾岸署には爆弾が仕掛けられており、日向はその場所で爆発を起こす。旧湾岸署は爆発によって大きく損壊し、青島も爆発に巻き込まれる。
青島は爆発した建物から日向を連れて外へ出る。日向は生存しており、青島は日向に手錠をかけて逮捕する。日向は青島に「圭一はまだいるぞ。至る所に」と告げる。
事件後、須川圭一らも逮捕される。青島は須川の顔を見て、須川は、かつて青島が補導した少年だったことを思い出す。
翌日、新湾岸署の開署式が行われる。青島たちは新しい庁舎で業務を開始し、湾岸署の移転も完了しておしまい。
●感想
何台ものトラックがレインボーブリッジを渡ってきて、青島さんが「捜査会議を始める」とシリアスな表情で話し始めるところから、実は大規模な引っ越し作業だったというシリーズらしいズッコケから始まります。新湾岸署への移転を進める署員たちの慌ただしい日常が描かれたところで、金庫破りやバスジャックが発生します。
ところが、どちらも犯人が金品を奪わずに立ち去ってしまいます。さらに署内から拳銃3丁が盗まれていることも判明し、その拳銃が殺人事件に使用されます。引っ越しという日常的な出来事から、拳銃盗難、殺人事件、犯罪者の解放要求へと事件が広がっていく展開は、『踊る大捜査線』らしい大きな事件の始まり方でした。
今回も本庁から捜査官がやって来て、所轄の青島たちが振り回される構図になります。その中で小栗旬さん演じる鳥飼誠一が青島と本庁の間に入り、共同で捜査を進めることになります。インターネットを利用して犯人側と接触し、青島が過去に逮捕した犯罪者たちの解放を要求される展開も、これまでのシリーズ作品につながる要素として描かれています。
室井さんが警察上層部から犯罪者の釈放を求められる場面も印象に残ります。現場で事件を追う青島と、警察組織の中で判断を迫られる室井という、それぞれの立場から事件を描いているところはシリーズらしい部分です。
一方で、青島の健康診断をめぐるエピソードが事件の途中に入ってきます。肺に影があることが分かり、その情報が周囲にも伝わることで青島の身辺に変化が起こります。青島がいつものジャケットを着て現場へ向かう場面もあり、シリーズの過去作品を思わせる演出になっています。
事件を追っていくと、日向真奈美と須川圭一の関係が明らかになります。さらに須川の自宅を調べている途中でパソコンが爆発し、鳥飼が負傷します。その後は新湾岸署そのものがセキュリティによって閉鎖され、署員たちが建物から出られなくなる展開へ進みます。
新湾岸署は最新のセキュリティを備えた建物として登場するのですが、そのセキュリティが逆に署員たちを閉じ込める原因になり。何をしても開かない扉を最終的に電源を落として解除するという展開には、かなりシリーズらしいユーモアがありました。
日向を乗せた護送車が羽田空港ではなく旧湾岸署へ向かい、そこで爆発が起こる展開は、この作品の中でも大きな見せ場です。青島が爆発した建物から日向を救出し、そのまま逮捕することで事件は解決します。
ただ、個人的には、少し笑える場面を入れようとしている一方で、事件そのものはかなり深刻なので、笑いとシリアスな展開の切り替えがうまく噛み合っていないように感じました。また、スローモーションを使った演出も何度か入るため、物語の流れより演出のほうが気になってしまう場面があります。
特に、バスジャックや金庫破りから始まり、拳銃3丁の盗難、殺人事件、犯罪者の釈放要求、新湾岸署の封鎖、旧湾岸署の爆破へと事件が広がっていくため、終盤になるにつれて「今は何の事件を追っているのか」と感じるところもありました。
新湾岸署が最新のセキュリティを備えた施設として登場するにもかかわらず、犯人側にシステムを利用されてしまう点も気になります。さらに、冒頭のバスジャックや金庫破りが最終的な計画の中でどのような役割を果たしていたのかも分かりにくく、大掛かりな事件がいくつも登場する割には、それぞれの出来事が一本の事件としてつながっていく感覚が弱く感じられました。
青島と日向真奈美の最後の対決や旧湾岸署の爆発には見せ場がありますが、全体としては事件の数と演出が多く、140分の上映時間の中で情報量がかなり多い作品です。『踊る大捜査線』のキャラクターや過去作品とのつながりを楽しむ部分は多いものの、一本の刑事ドラマとして見ると、事件の目的と個々の出来事の関係が分かりにくい作品でした。
☆
鑑賞日:2022/02/28 NETFLIX 2026/08/26 U-NEXT
| 監督 | 本広克行 |
|---|---|
| 脚本 | 君塚良一 |
| 脚本協力 | 金沢達也 |
| 出演 | 織田裕二 |
|---|---|
| 深津絵里 | |
| ユースケ・サンタマリア | |
| 伊藤淳史 | |
| 内田有紀 | |
| 小泉孝太郎 | |
| 北村総一朗 | |
| 小野武彦 | |
| 斉藤暁 | |
| 佐戸井けん太 | |
| 小林すすむ | |
| 甲本雅裕 | |
| 遠山俊也 | |
| 寺島進 | |
| 松重豊 | |
| 高杉亘 | |
| 小栗旬 | |
| 柳葉敏郎 |


