●こんなお話
サイコパスな富裕層の人間狩りゲームに知らずに強制参加させられた格闘王の戦いの話。
●感想
格闘技のチャンピオンを目指す二人の親友がいます。主人公はその親友との対戦で勝利を収め、見事チャンピオンの座につきますが、試合中の事故により親友が亡くなってしまいます。その出来事に深く傷ついた主人公は、タイの地下格闘技の世界へと足を踏み入れることになります。そこで彼はプロモーターに見出され、大金を提示されて指定された場所へ赴くのですが、そこに集まっていたのは大富豪たちで、彼らはボウガンや銃を携え、実は「人間狩り」を楽しむための集まりであることが明らかになります。さらにタイの悪辣な軍人たちもこの狩りに協力しており、逃げ場のないジャングルの中で主人公は追いかけっこを強いられる。
以降は追跡劇が繰り広げられ、格闘シーンや地雷原を駆け抜ける緊迫の場面、さらにはバイクチェイスも登場します。アクション俳優スコット・アドキンスが見せ場を多く作っており、アクション映画としての楽しさがしっかりと味わえます。人間狩りというジャンル映画ならではのスリルが随所に感じられ、観客を引き込む力も十分です。
しかし物語の中盤で、象の群れの中に突然現れる現地の女性が登場。彼女は弟を人間狩りで失い行方不明となっているため、主人公と行動を共にすることになります。この女性の存在は途中からの参加のように感じられ、彼女の物語が加わることで物語の流れに新たな層が加わります。ですが、彼女の行動には驚かされることが多く、敵役に襲われそうになった際に衝動的に殺害してしまい、その後も残酷な手段で相手を倒す場面があり、彼女のキャラクターが一筋縄ではいかない複雑な人物像であることを示しています。行方不明だった弟と偶然洞窟で再会し、休息をとる場面では、大きな仏像が佇む不思議な映像が印象的に映し出されました。
クライマックスはミャンマーかその周辺の国境にかかる橋で繰り広げられます。ここでは敵のボスが仲間を率いて主人公に挑み、一対五の激しい戦いが展開されます。ただ、敵がどこから突然現れたのかという唐突な印象も受けました。また、洞窟で目覚めた主人公は女性と弟が姿を消していることに気づき、彼らが捕らえられていることを知ります。ここからの展開も急で、状況が説明不足に感じられる部分もありました。ボスが軍人たちの銃撃で倒れるシーンでは、銃弾の方向が主人公たちにも向けられているように見え、思わず主人公への影響が気になってしまう演出となっておりました。
撮影にはおそらく限られた予算であると推察されますが、タイの原生林をドローンで捉えた映像は迫力があり、作品の大きな魅力のひとつとなっていました。壮大な自然の中で繰り広げられるアクションは、視覚的な楽しさを存分に提供してくれました。
☆☆☆
鑑賞日:2022/02/22 DVD
監督 | ロエル・エイネ |
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脚本 | マット・ハーヴェイ |
出演 | スコット・アドキンス |
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ロバート・ネッバー | |
ローナ・ミトラ | |
テムエラ・モリソン |