ドラマ【FARGO/ファーゴ シーズン3】感想(ネタバレ):イギリス人の来訪から動き出す運命の歯車

Fargo Season 3
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●こんなお話

 2011年に起こった駐車場経営者とその弟と恋人とか起こる悲喜劇の話。

●感想

 セピア色の画面に包まれた空気がまず印象的で、画面越しに肌寒さが伝わってくるような、そんな始まりだった。どこか乾いた風が吹くような雰囲気のなかで、物語は淡々と、しかし確実に混沌へと向かっていく。全10話を通して描かれるのは、誤解と欲望と、わずかな運命のズレが引き起こす連鎖の物語。毎話ごとに趣向を凝らしたタイトルの出し方も魅力で、冒頭の数十秒からすでに「次は何が起こるのか」と期待を抱かせてくれる構成でした。

 兄弟が物語の中心に据えられ、兄は相棒と共に駐車場ビジネスを展開。表向きは成功しているが、その実態は定かではない。弟は保護観察官として働いていて、規則では関係が禁じられている相手と恋愛関係にある。幼い頃のわだかまりが今なおくすぶっていて、父親の遺産をめぐる選択の記憶、つまりプレミア切手を選ばず車を受け取ったことをいまだに引きずっている。そんな些細な過去の選択が、今の関係性にも影を落とす。

 ある日、兄の職場に現れた謎めいたイギリス人。この人物の登場によって、それまで保たれていたバランスが崩れていく。物語はここから一気に加速し、予想外の方向へと展開していく。弟が兄の家から切手を盗もうとしたことが発端となり、間違って無関係の人物が殺害される。この「勘違い」から物語が始まるというのも、本シリーズらしい皮肉な始まりで、軽やかな笑いの裏に深い闇が潜んでいるのが印象的だった。

 やがて事件は収拾がつかない規模へと膨らんでいき、イギリス人を中心とした勢力が、兄の会社を乗っ取るべく動き出す。殺しも躊躇せず、あらゆる場所に潜り込んで自分たちに都合の良いように状況を変えていく様子には、静かな恐ろしさがあったように思います。誰もが何かに脅され、誰もが何かを隠していて、信頼という言葉がまるで存在しない世界が描かれていたように感じました。

 弟は金を得ることに固執し、兄は不気味な存在に支配され、どちらも抜け出せない泥沼のような状況に飲み込まれていきます。後半では、弟の恋人が強い意思を持ってリベンジへ向かっていき、この展開は特に印象的でした。自分の思いと行動を一致させる女性の力強さが、物語の重たいトーンに変化を与えていたと思います。そして、事件を追い続けてきた元署長の存在が、わずかな光のような希望でもありました。

 物語を通して、次に何が起こるのか、登場人物たちはどう動くのか、毎話の展開が常に気になる構成になっていて、全10話を飽きることなく一気に観ることができました。特に印象的だったのは、冒頭でセンサーに反応しない体質として描かれていた元署長が、最終話でセンサーに反応した場面でした。ひっそりと仕込まれたこの小さな変化に、ぐっと感情を持っていかれた気がします。こういった細やかな描写が、ただのサスペンスではない深みを物語に与えていたのではないかと感じています。

 作品全体を通じて、バイオレンスとユーモアが絶妙なバランスで共存していて、映像の美しさや構図のセンスも相まって、完成度の高いシリーズだったと思います。

☆☆☆☆

鑑賞日:2011/08/15 NETFLIX 2025/07/07 Amazonプライム・ビデオ

製作総指揮ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
出演ユアン・マクレガー
キャリー・クーン
メアリー・エリザベス・ウィンステッド
ゴラン・ボグダン
デヴィッド・シューリス
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