映画【ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷】感想(ネタバレ):呪いが国境を越えて広がる恐怖

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●こんなお話

 一家惨殺事件が起こった家をきっかけに関係者が殺されていく話。

●感想

 物語は2004年の日本から始まる。介護施設で働くアメリカ人女性フィオナ・ランデスが、呪われた家を訪問したことをきっかけに、異常な行動を見せながら帰国する。彼女は夫と幼い娘と共にアメリカ郊外の町クロス・リバーに移り住むが、家の中では説明のつかない現象が続き、やがてフィオナは夫と娘を殺害し、自らも命を絶つ。

 その後、この家を引き取った不動産業者ピーターと妻ニーナが家の調査に訪れる。ピーターは屋敷内で少女の幻影を目撃し、正気を失って妻を殺害し、自ら命を絶つ。家は再び市場に出るが、購入者や関係者が次々と失踪、または不可解な死を遂げるなど、呪いの連鎖は止まらない。数年後、妊娠中の刑事モルダーと相棒のグッドマン刑事が森で見つかった遺体事件を追うことになる。グッドマンはかつてこの家の事件を担当しており、相棒が憑りつかれて「関わった者は全員死ぬ」と語って自殺を図るなどの行動をしていたことがわかってくる。モルダーは真相を追うため家へと足を踏み入れる。

 一方、末期がんを患う老夫婦フェイスとウィリアムがこの家を購入していた。フェイスの尊厳死を望むウィリアムは尊厳死の専門業者を呼ぶが、彼女の精神状態を理由に断られてしまう。その後、家の中では水音や子どもの声が響き始め、フェイスは幻覚に導かれるように夫を殺害し、自ら命を絶つ。モルダー刑事は過去の事件を洗い出し、すべてが同じ屋敷に関係していることを突き止める。彼女は屋内でフィオナと娘メロディの亡霊と遭遇し、逃げ出すが、すでに呪いを家から持ち帰ってしまっていた。最後、彼女は幻の子どもを抱きしめるが、それが呪いの幻覚であることに気づき、遠くから母の悲鳴が響いておしまい。


 本作は、時間軸が前後しながら複数の人物が“呪いの家”に関わっていく構成で、オリジナル版『呪怨』のスタイルを受け継いでいます。恐怖の演出は静かで重たく、どの登場人物も少しずつ現実と非現実の境界が曖昧になっていく過程が丁寧に描かれていました。映像は全体的に黄色味の強いトーンでまとめられ、アメリカ映画でありながら湿度を感じる画作りが印象的でした。

 主演のアンドレア・ライズボロー演じる刑事モルダーは、夫を亡くして息子と新天地へ移り住んだ女性で、静かな悲しみを抱えながら怪異に巻き込まれていく姿が見応えありました。恐怖と母性がせめぎ合う中で、現実が少しずつ崩れていく表情の演技は素晴らしかったです。また、ジョン・チョー演じる不動産業者ピーターのエピソードも強く印象に残りました。子どもができたことを素直に喜べない複雑な心情を演じ、短い登場ながら確かな存在感を放っていました。

 一方で、登場人物が多く、時間軸が交錯する構成のため、やや把握しづらい部分もあります。ホラー描写は驚かせるタイプの演出が中心で、心に染みる恐怖というよりはショックの積み重ねのような印象を受けました。ただ、安楽死というモチーフを絡めた夫婦の物語や、家の静けさの中に漂う不穏さなど、シーンごとの密度は高く、しっかりとした世界観を感じました。

 本作は、呪いの根源を明確に語らないまま物語が進むため、結末を迎えても不気味な余韻が残ります。恐怖の説明を省くことで、“呪い”というものの形のなさや、誰にでも訪れる不幸の理不尽さを感じさせる作りでした。エンドクレジットに流れる静けさも印象的で、観終わった後もどこかざわつく感覚が残ります。作品全体を通して、恐怖そのものよりも「悲しみの伝染」を描いたホラーとして印象に残る作品でした。

☆☆☆

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監督ニコラス・ペッシェ 
脚本ニコラス・ペッシェ 
原作映画脚本清水崇
原案ニコラス・ペッシェ 
出演アンドレア・ライズボロー 
デミアン・ビチル 
ジョン・チョー 
ベティ・ギルピン 
リン・シェイ 
ジャッキー・ウィーヴァー 
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