●こんなお話
スーパーマンの故郷を追放された悪人トリオが地球で大暴れしてスーパーマンにチャレンジしてくる話。
●感想
本作のストーリー自体は、初公開版と大きくは変わっておりません。クリプトン星から追放された3人の悪人たちが地球にやってきて、地球の環境下では自分たちが驚異的なスーパーパワーを持っていることに気づきます。そして、その力を利用して世界を支配しようとし、遂にはアメリカ大統領にまでひざまずかせるに至ります。その過程で、かつて自分たちを追放したクリプトン人の息子が、地球ではスーパーマンとして活躍していることを知り、スーパーマンに対して直接的な挑戦を仕掛けてくるという王道の展開です。
スーパーマンは一方で、恋人であるロイス・レインに対して、自分の正体を隠し通そうとしますが、彼女は徐々にクラーク・ケントがスーパーマンではないかと疑いの目を向け始めます。その疑念が高まる中での描写は、冒険篇よりもさらに緊迫感がありました。
いわゆる「冒険篇(劇場公開版)」との違いとしては、パリにおけるテロリスト事件でスーパーマンが活躍する冒頭のシーンがまるごとカットされていた点がまず印象的。また、ロイス・レインの行動もより大胆になっており、クラーク・ケントに「自分がスーパーマンなら助けて」と言って高層ビルから自ら飛び降りたり、さらには拳銃を向けて実際に撃ってしまうという極端な行動まで見せます(後に空砲であったと判明しますが)。こうした描写から、彼女の疑いの強さや、スーパーマンの正体に迫ろうとする執念が、冒険篇以上に強調されている印象を受けました。
さらに本バージョンでは、マーロン・ブランド演じるスーパーマンの父・ジョー=エルの登場シーンが大幅に追加されており、主人公にアドバイスを与えるくだりがより重厚になっています。その影響もあってか、悪役トリオの暴れ回るシーンは若干削られており、ヒーローとしての葛藤や自己犠牲にスポットが当たる構成となっています。
そして物語のクライマックスでは、何とスーパーマンが地球の自転を逆回転させることで時間を巻き戻し、ロイスの記憶を消してしまうという驚きの展開が用意されています。この結末は第1作と全く同じという点で賛否両論あるかもしれませんが、ある意味で“何でもアリ”なヒーロー映画らしい豪快さが光ります。
正直なところ、私は先に劇場公開版である『スーパーマンII 冒険篇』を視聴していたため、本バージョンには目新しさをそこまで感じることはできませんでした。しかし、それでもやはりジョン・ウィリアムズの手がけたスーパーマンのテーマ曲を聴いていると、それだけで心が高揚し、自然と笑みがこぼれてしまいます。ストーリーの構成や演出の細かな違いよりも、この音楽が与えてくれる感動の力は、やはり偉大であると改めて感じました。
バージョン違いとしての価値を理解しながらも、根底には変わらぬ魅力が息づいている作品だと感じました。ヒーロー映画としての王道と、古き良き時代の映画製作へのリスペクトが同居する一本です。
☆☆☆
鑑賞日:2021/01/15 U-NEXT
監督 | リチャード・ドナー |
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脚本 | マリオ・プーゾ |
デイヴィッド・ニューマン | |
レスリー・ニューマン | |
音楽 | ジョン・ウィリアムズ |
出演 | クリストファー・リーヴ |
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ジーン・ハックマン | |
マーロン・ブランド | |
ネッド・ビーティ | |
マーゴット・キダー | |
テレンス・スタンプ |