●こんなお話
高層ビルで火災が発生する話。
●感想
物語の舞台は、完成間近の超高層ビル。建築設計士である主人公は、仕事の確認のため現場を訪れます。多忙な中でも、久々に再会した妻とのひとときに気持ちがほぐれます。そんな中、ある部屋で小さな火災が発生。原因を調べるうちに、設計段階では考えられなかった手抜き工事が明らかになっていく。それを指示していたのは、ビルを所有する社長の娘婿。
火災はあっという間にビル全体に広がっていき、主人公の友人も巻き込まれて重体に。ビルにはまだ多くの人々が取り残されており、消防隊が駆けつけて救助を試みますが、エレベーターでの避難は失敗し、乗っていた人々が犠牲になるなど、次第に事態は深刻さを増していく。
逃げ遅れた家族を救うため、主人公は高層階を命がけで渡って避難させたり、ヘリコプターによる救出作戦も試みられますが、ヘリが爆発してしまい作戦は失敗。次に取られた手段は、隣のビルから救助用のカゴを使って移動するという。そして最後は、屋上の給水タンクを爆破して一気に消火するという作戦が決行されます。
映画が始まって45分が経って、ようやくもう一人の主役であるスティーブ・マックイーンが登場。登場人物の紹介と火災発生の過程が同時進行で描かれる序盤は、目を離せない展開です。静かに広がる火事とともに、最初は余裕を見せていた名士たちにも死の恐怖が迫ってくる緊張感が、見事に描かれています。
セリフでいちいち状況を説明せず、マックイーンとポール・ニューマンの印象的なやりとりによって場面が進行していくのも、作品の魅力の一つです。スティーブ・マックイーン演じる消防士は、文句を言いながらも自分の責務を果たし、最後には何事もなかったかのように現場を去る姿が非常にかっこよく映ります。
登場人物それぞれの描かれ方も秀逸です。老詐欺師を演じたフレッド・アステアの哀愁漂う演技。リチャード・チェンバレンが演じる、最初から最後まで一貫して嫌われ役を貫くキャラクター。ロバート・ヴォーンが演じた議員の毅然とした最期。そして、市長の勇気ある決断や、若手消防士2人の奮闘も印象に残ります。さらに、出番は少ないながらも、子どもに優しいバーテンダーの人物像がしっかり描かれており、観客が感情移入できるように丁寧に構成されていました。
クライマックスの“水攻め”による消火シーンは、今の視点で見るとやや迫力に欠ける面もありますが、爆弾を担いで屋上へと向かう主人公たちの姿には、古き良きヒーロー像が感じられ、非常に胸を打たれます。
上映時間は約2時間45分と長めですが、実際にはあっという間に終わったような感覚になり、それほどまでに引き込まれる作品でした。火災パニック映画の金字塔といえる1本であり、今見ても十分に楽しめる傑作です。
☆☆☆☆☆
鑑賞日:2011/07/24 Blu-ray 2024/06/03 U-NEXT
監督 | ジョン・ギラーミン |
---|---|
脚本 | スティーリング・シリファント |
原作 | リチャード・マーティン・スターン |
トーマス・N・スコーティア | |
フランク・M・ロビンソン |
出演 | スティーヴ・マックイーン |
---|---|
ポール・ニューマン | |
ウィリアム・ホールデン | |
フェイ・ダナウェイ | |
フレッド・アステア | |
スーザン・ブレイクリー | |
リチャード・チェンバレン | |
ジェニファー・ジョーンズ | |
O・J・シンプソン | |
ロバート・ヴォーン | |
ロバート・ワグナー |