映画【ミネソタ無頼】感想(ネタバレ):視力を失う主人公が街を救う!新感覚西部劇アクション

MINNESOTA CLAY
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●こんなお話

 無実の罪で収容されていた男が脱獄して、濡れ衣を着せた仲間にリベンジする話。

●感想

 対立する2つの勢力の狭間で疲弊していく街を、孤独な主人公が救おうとする王道のストーリーに、視力を失いつつあるという独自の設定が加わっているのが印象的な映画でした。単純な正義vs悪の構図ではなく、視力の喪失という個人的な苦難が物語に緊張感を与えていて、よくある西部劇に一味違った個性を与えていたと思います。

 物語は、収容所を脱獄した主人公が、かつての仲間を頼って街に戻るところから始まる。だが、その仲間は今や悪徳保安官になっていて、自分を牢獄に入れた張本人だったという展開が面白かったです。街はその保安官と山賊の抗争でボロボロになっており、人々の暮らしも荒れている。

 そんな中、主人公は亡き妻との間に生まれた娘と偶然出会い、自分の正体を明かさず、距離を取りながら接していく。この父と娘の再会をめぐるパートには静かな感情が流れていて、アクションの合間に心を落ち着けるシーンになっていました。

 物語が動き出すのは、山賊たちが主人公を仲間に引き入れようとし、悪徳保安官の暗殺を持ちかけるところから。だが山賊側は、金を奪われたと勘違いして主人公を裏切り、激しい銃撃戦に突入。主人公が窮地に追い込まれたところで、皮肉にも保安官たちが山賊を急襲し、勢力図が一気に崩れる。こうした裏切りの連鎖や勢力の転換が目まぐるしく展開されていくのは、見応えがありました。

 特に山賊の女頭領は、欲深く残忍でありながら妖艶さもあり、西部劇における「悪女」の魅力をたっぷり見せてくれる存在。主人公の娘との対比も効いていて、女性キャラクターの描き方が印象的です。まるでセルジオ・コルブッチ作品に出てくる女性たちのように、美しさと強さを併せ持っていたのがよかったです。

 クライマックスでは、視力を失った主人公が暗闇の中で音だけを頼りに銃撃を繰り広げるという設定がユニーク。特に、娘と共有しているブレスレットの音で人質の位置を特定し、それをもとに敵を撃つという展開は面白く、盲目の不利を逆手に取った戦術として印象に残ります。

 ただし、暗闇の描写がリアルすぎて、観客側としては何が起きているのか分かりにくく、クライマックスとしての盛り上がりが少し物足りなかったです。せっかくの面白い設定が、映像面で損をしている印象もありました。

 また全体的にテンポがゆっくりで、90分という短めの尺にもかかわらず、前半の半分近くは大きな展開がなく、観ていて退屈に感じる時間が多かったのは惜しいと思います。主人公も基本的には受け身の立場で、敵側から何かされないと動かないというスタンスが、ドラマとしての推進力をやや削いでいたと感じました。

 それでも、西部劇らしい美学や、登場人物の過去と再会が織りなす人間ドラマには見応えがありましたし、視力を失う主人公という設定を使ったアイディアにはしっかり個性があり。もう少しスピード感や盛り上がりがあれば、より強く印象に残る一本になったと思いました。

☆☆

鑑賞日:NHK BSプレミアム

監督セルジオ・コルブッチ 
脚本アドリアーノ・ボルツォーニ 
出演キャメロン・ミッチェル 
ジョルジュ・リヴィエール 
ディアナ・マーティン 
エテル・ロージョ 
フェルナンド・サンチョ 
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