●こんなお話
宝石強盗事件に巻き込まれた女性たちと復讐に燃える男性がヤクザと戦う話。
●感想
暴力団・野崎組傘下の中嶋組から執拗な取り立てを受けていた工場経営者・外山正道は、妻・陽子は中嶋組の男たちに暴行され、その後自ら命を絶つ。外山は妻の誕生日に猫目石の指輪を贈ると約束していたが、それを果たせなかった後悔を胸に抱えている。
外山は復讐と資金確保を同時に果たすため、中嶋組の事務所を襲撃し、現金五百万円を奪う。組員を制圧し、金を持って逃走する。その足で宝石店に向かい、猫目石を買おうとするが、そこへ梶と直子らによる強盗団が押し入る。店内は騒然となり、居合わせた客たちは床に伏せさせられる。
その場にいたのが、蘭、志保、早紀、サユリ、そして店員のちひろだった。混乱の中、蘭たちは隙を突いて強盗の銃と猫目石を奪い、店を飛び出す。偶然共闘する形となった五人は、互いの素性をよく知らぬまま逃走を開始する。
彼女たちは横浜のディスコ跡に身を隠すが、中嶋組はすぐに動き出し、追手を差し向ける。逃亡の途中で裏切りなどがありつつ、関係は揺らぐ。プールサイドで休息していた人物が刺客に射殺される事件も起こる。逃げ出そうとした者が組に捕まり、拷問を受けたり。
外山もまた猫目石を追って行動を続け、捕らえられた女たちのもとに現れる。日本刀を手に刺客と斬り結び、相打ちとなる。女たちは混乱の中で脱出し、追ってくる組員を撃退しながら突破する。
やがて外山のもとへ妻・陽子の遺体が運ばれる。外山は妻と対面する。女性たちは野崎組長のもとへ乗り込み、銃声が響いておしまい。
本作の最大の魅力は、主演の緒形拳の存在感に尽きます。日本刀を携え、遠景からゆっくり歩み寄る姿だけで画面の空気が変わります。静かな表情の奥に潜む怒りと哀しみが滲み出ており、まるで時代劇の剣豪を現代に置き換えたかのようです。刀でヤクザを斬り伏せる場面は迫力十分で、銃社会の中にあえて日本刀を持ち込む演出が強烈な印象を残します。
その一方で、五人の女性たちは設定上重要な役割を担っているものの、人物像の掘り下げに濃淡があります。強く記憶に残る人物と、やや印象が薄い人物が分かれてしまう点は惜しいところです。背景や動機がもう少し丁寧に積み重ねられていれば、群像劇としての厚みはさらに増したと感じます。
宝石店での偶然の遭遇から三者の抗争へと発展していく展開は勢いがありますが、行動原理が急に見える場面もあり、観る側に想像を委ねる部分が多い構成です。大竹しのぶのセーラー服姿や、夏川結衣の初登場シーンの突飛な演出など、石井隆作品特有の様式美とフェティッシュな映像感覚が前面に出ています。
鶴見辰吾が演じるモヒカンのヒットマンはとりわけ印象的です。青白い顔で笑いながら銃を撃つ姿は不気味でありながら魅力的で、画面に緊張感を与えています。永島敏行と緒形拳の対峙も熱量が高く、無言の睨み合いから始まる肉弾戦は見応えがあります。
終盤、包囲され絶体絶命に見える状況からの展開は予想を裏切るもので、独特の余韻を残します。整然としたカタルシスというよりも、混沌を抱えたまま進む物語ですが、それも含めて石井隆の美学が表れている作品です。緒形拳の圧倒的な存在感を堪能する一本として、強く印象に残りました。
☆☆☆☆
鑑賞日:2010/01/16 DVD 2026/03/04 U-NEXT
| 監督 | 石井隆 |
|---|---|
| 脚本 | 石井隆 |
| 出演 | 緒形拳 |
|---|---|
| 大竹しのぶ | |
| 余貴美子 | |
| 喜多嶋舞 | |
| 夏川結衣 | |
| 西山由海 | |
| 松岡俊介 | |
| 片岡礼子 | |
| 山口祥行 | |
| 永島敏行 | |
| 鶴見辰吾 | |
| 左とん平 | |
| 多岐川裕美 | |
| 飯島大介 | |
| 寺島進 | |
| 阿部雅彦 | |
| 速水典子 | |
| 竹中直人 | |
| 椎名桔平 | |
| 寺田農 |


