●こんなお話
人間のロボット化が進む世界で、前前前世に悩む主人公の話。
●感想
主人公は公安9課のエリートメンバーとして、ロボット企業ハンカ社の幹部がハッキングにより殺害される事件を捜査していく。捜査が進む中で「クゼ」という謎のハッカーの存在が浮上。クゼはハンカ社の関係者ばかりを標的にしており、単なるサイバー攻撃ではない様子。
主人公は任務中に奇妙な幻覚のようなビジョンを断片的に見るように。自らの記憶に疑念を抱き始めた主人公は、上司の荒巻やハンカ社の開発責任者オウレト博士に質問したり。
納得のいかない主人公は単独でクゼを追い、ついに対面。クゼは、主人公と同じようにハンカ社によって義体化された被験者であり、政府によって存在を隠蔽されてきた存在だったことを話す。彼は主人公に「お前の記憶は偽物だ」と語りかけ、かつて人間だった頃の本当の名前を思い出させる。主人公はその名が「草薙素子」であったことを思い出し、これまで自分の記憶は埋め込まれたもので、政府の実験で自由を奪われた普通の少女だったことを知る。
ハンカ社は過去の非人道的な実験を隠すため、クゼの抹殺に動き、主人公も標的にされる。唯一、オウレト博士だけが捕まった主人公の脱出を手助けするが、すぐに殺される。クゼも公安とハンカ社の多脚戦車に攻撃されて戦いに、クゼも主人公もボロボロになるけど公安の仲間たちが助けに来て再起動し、復活。
ハンカ社の責任者・カッターは上司の荒巻によって射殺。主人公は素子の母親と再会して、自我に目覚めて公安9課の一員として今日も任務に就くのであった。でおしまい。
未来都市の描写はアジアンな雰囲気で、どこか『ブレードランナー』を思わせる美術設計が視覚的に楽しかったです。正直、過去の名作SFの影響を色濃く受けた印象があり、新鮮味は薄い気がしました。けれど、その世界観自体は楽しく、スムーズに鑑賞できました。上映時間もハリウッド大作にしては短めで、テンポよくコンパクトにまとまっており、ライトなSFアクションとしては十分に楽しめると思います。
ただ、記憶を失った主人公が「本当の自分を探す」という構造や、義体と魂の対立といったテーマは、これも他のSF映画などでも描かれてきた要素だと思うので、どうしても既視感が強かったです。SFとしての衝撃や熱量に欠け、どこかクールで淡々としたエンタメ映画という印象でした。
また、公安9課のメンバーはほとんど存在感がなく、活躍の場が限られていたのが惜しかったです。特にビートたけし演じる荒巻は、世界観とのミスマッチを感じてしまいました。ピストル1丁でマシンガンの敵を倒すシーンは一見するとかっこいいですが、まるでそこだけヤクザ映画のように見えてしまいました。
それでも、街並みやサイバー描写の美しさは特筆すべき点で、映像的には高い完成度を感じます。結果的に、『ゴースト・イン・ザ・シェル』という作品をきっかけに、逆にアニメ映画の『攻殻機動隊』や『ブレードランナー』の偉大さを再認識できたという意味では、見て損はない作品だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日: 2017/05/08 シネマサンシャイン平和島 2018/01/13 Blu-ray 2025/06/02 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ルパート・サンダース |
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脚本 | ジェイミー・モス |
ウィリアム・ウィーラー | |
アーレン・クルーガー | |
原作 | 士郎正宗 |
出演 | スカーレット・ヨハンソン |
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ビートたけし | |
マイケル・カルメン・ピット | |
ピルー・アスベック | |
チン・ハン |
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