ドラマ【イエスの方舟】感想(ネタバレ):逃げ場を求めた女性たちの葛藤と誇り――「イエスの方舟」が描く現代社会の問題

hakobune
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●こんなお話

 イエスの方舟という宗教団体に今の生活が嫌で逃げてきた女性信者たちの生活と女性たちを拉致してハーレムを作っているという親たちマスコミたちのバッシングの話。

●感想

 現在の生活に嫌気がさし、居場所を求めて宗教団体「イエスの方舟」に逃げ込んだ女性信者たちの生活と、彼女たちを取り巻く社会の葛藤が描かれていて、女性たちは自らの意思でこの団体に身を置いているにもかかわらず、外部の親御さんたちやマスコミからは「拉致されてハーレムを作っている」という誤解やバッシングが絶えず、激しい軋轢が生まれてしまう様子が描かれます。

 特にマスコミの追及のあり方には問題提起があり、事実を十分に調べずに一方的な批判を繰り返す姿勢が痛烈に映し出されています。実話をベースにしているとのことで、単なるドラマに留まらず、現代社会が抱える問題を考えさせられる作品だと思います。

 物語は、宗教団体「イエスの方舟」を創設する主人公と信者たちの深い絆、そして信者たちを取り戻そうと必死になる親たちの葛藤が丁寧に描かれており、主人公の幼少期から青年期までの回想も織り交ぜながら物語が展開。序盤では、信者たちが親との関係に嫌気がさし、苦しい現実から逃避する形で団体に入っていく心情などがあり。

 しかしながら、上映時間の95分という限られた尺の中で、多くのエピソードが詰め込まれている印象があり、時に物語が散漫になる部分もありました。また、主人公と信者たちの間にある強い絆の具体的な描写がややわかりにくく、なぜ多くの信者が「おっちゃん」と呼び慕っているのかという点についても十分な説明がなかったように感じました。確かに電話で呼ばれれば九州まで出向くなど熱意は伝わってくるのですが、それでも人物像がやや掴みづらかった部分があります。

 さらに、主人公が寡黙で聖書を読む姿が中心に映し出されるため、彼の内面の苦悩やマスコミからのバッシングに対するストレス、辛さといった感情が十分に伝わってこなかった点は少し残念に感じました。

 個人的には、主人公の幼少期や人格形成に焦点を当てるよりも、現在の信者たちの生活や彼女たちが置かれた現状をより深く掘り下げて描いていく方が、ドラマとしての面白みが増したのではないかと感じました。

 総じて、本作は実話を基にしながらも、宗教団体を取り巻く誤解や偏見、そしてそこに生きる女性たちの複雑な心情を丁寧に描き出した作品であり、社会問題を考えるきっかけになる作品でした。

☆☆☆

鑑賞日:2014/01/25 VHS

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