映画【怪獣大戦争】感想(ネタバレ):ゴジラがX星で大活躍！軽やかに描かれる異星人との知恵比べ

●こんなお話
●感想
☆☆☆

●こんなお話

　X星という謎の惑星に調査にきた人間がそこでX星人と遭遇して、彼らはキングギドラに悩んでいて地球にいるゴジラとラドンをもらってキングギドラと戦わせようとする。そのお礼にガンの特効薬をもらえるとなるけど。実は地球の水を狙って侵略を狙っているX星人との戦いの話。

●感想

　テンポの良いストーリー展開と、登場人物たちの軽妙なやりとりが印象的な一作。全体に緊張感が薄いものの、その肩の力の抜けた空気感が心地よく、観ていて自然と笑みがこぼれるような楽しさがあります。なかでも印象深いのは、地球人のグレンとX星人の女性との間に生まれる悲恋のエピソード。異星人とのすれ違いと絆が、短いながらも鮮やかに描かれています。

　ストーリーの中盤では、しがない発明家が開発した装置が鍵を握ることになり、この発明がX星人との戦いの切り札として活躍します。単なる脇役のように見えていた人物が、終盤に大きな役割を果たしていく流れは、古き良きドラマのようで胸が躍ります。

　物語のクライマックスでは、あの有名なメインテーマ曲とともに、防衛軍の火力が炸裂します。特撮の力強さと爆発の迫力が画面から伝わってきて、まさに胸が熱くなる瞬間です。レトロな特撮の醍醐味が詰まった、観ていて気分の高揚するシーンの連続でした。

　X星人とのやりとりの中で、地球から怪獣を“レンタル”するという展開もユニークです。円盤の光線に乗って運ばれるゴジラの姿は、威厳よりもむしろ愛嬌を感じさせてくれて、観る者の心を和ませてくれます。X星でキングギドラと戦うゴジラとラドンのバトルも見どころのひとつ。思わず声を上げたくなるような迫力が、画面を通して伝わってきます。

　それにしても、X星人たちはなぜあれほどまでに回りくどい作戦を立てたのか。その行動の意図には首をかしげたくなりますが、そこにまた物語ならではの魅力があります。彼らが最初から水資源を狙って行動していたならば、話はもっとシンプルになっていたはず。それでも彼らの小芝居があるからこそ、地球側のドラマも豊かに展開していきます。

　また、怪獣たちのプロレス的な戦いは、いわばサービスシーンとして挿入されており、物語の主軸はむしろ地球人とX星人との攻防に置かれています。X星人が“電子計算機”の指示通りに動くという設定は、どこか哀しさを感じさせる要素として物語に深みを与えてくれます。

　今回のゴジラは、物語の中心から少し外れた存在として描かれており、その点でやや物足りなさを感じる部分もありましたが、全体を通してレトロな特撮の魅力がたっぷりと詰まった作品でした。スモークに包まれた都市のミニチュア、手作り感のある造形、独特の爆発演出など、どこを切り取っても昭和の特撮映画らしさが満載です。

　昭和の空気を残しつつ、異星人との駆け引きや科学技術が物語を彩る中、ゴジラたちはしっかりとその存在感を放ってくれました。物語のおしまいには、地球の知恵と勇気によって危機を乗り越えるという、古典的ながらも満足感のある締めくくりが待っています。