映画【空人】感想(ネタバレ):特攻隊モチーフのドラマが描く罪悪感と和解の物語

Kuujin
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●こんなお話

 特攻隊の生き残りの老人が、恩人のお墓詣りに行ったら親戚の娘さんに会って昔の儀式である死者との結婚式をする話。 

●感想

 少年時代に特攻隊として死を覚悟していた主人公が、出撃直前に病気となり、代わりに先輩が出撃したことで自分だけが生き残ったという強い罪悪感を抱えながら、その後ガンを患い余命が限られてしまうという設定から物語が始まります。この贖罪の旅というテーマは非常に期待を抱かせるものであり、戦争の悲劇と個人の心の葛藤を丁寧に描き出そうとする意図が感じられました。

 しかし、物語の中心となる「死者との結婚式」という儀式の描写に関しては、感情移入しづらく、ストーリーに乗り切れなかったです。特にヒロインの動機や考えが不明瞭なまま話が進行してしまうため、物語の核となる部分が曖昧に感じられました。

 また、年齢設定に関しても疑問が残り。現在の登場人物が非常に若すぎるように感じられ、特に主人公である老人に対して「お父さん」と何度も呼びかけながらお世話をするシーンには違和感を覚えました。これらの描写が物語の説得力やリアリティに影響を与えたのではないかと考えたり。

 さらに、特攻隊をモチーフにした作品であるにもかかわらず、その要素は物語の中であまり活かされておらず、むしろ老人が布団で苦しむシーンや若い女性との甘い交流が中心となっている点も気になりました。このため、作品を通じて特攻隊の実態やその悲劇について深く考えさせられる内容とは言い難く、やや期待外れに感じてしまいました。

 総じて、本作は贖罪のテーマに挑戦しつつも、描写や設定の不整合が鑑賞体験に影響を及ぼしてしまった印象が強い作品でした。

☆☆

観賞日: 2018/11/16 DVD

監督小沼雄一 
脚本小沼雄一 
港岳彦 
原作清宮零
出演奥野匡 
高橋かおり 
長谷川奨 

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