映画【武士の献立】感想(ネタバレ):料理を通じて心通わせる夫婦の成長物語

bushikon
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●こんなお話

 武士の刀を包丁に持ち替えて藩に仕える包丁侍とその奥さんの仲睦まじい夫婦の話。

●感想

 物語は、華やかさや派手な事件が起こるわけではない。けれど、その分、日々の暮らしの中で丁寧に紡がれていく人間関係や感情の変化が繊細に描かれていて、静かな好感を持って観ることができる作品でした。

 主人公は、女中として仕えていた少女時代から、料理が得意で食への好奇心が強い。その性格を生かして、ある宴の席で藩の料理人が作った料理を、味や食材、調理法まで細かく言い当ててしまう。その姿に驚いた次男坊から「嫁に来てほしい」と申し込まれ、包丁侍の家へと嫁ぐことになる。

 しかし、その次男坊は、刀を捨て料理人として生きることにいまだ納得しておらず、家業に対して反発を抱えていた。最初のうちは、主人公に対してもどこか冷たい態度で接するが、主人公はそんな夫に根気強く料理を教える。そして次第に夫の料理の腕前も上がっていき、ふたりの距離が少しずつ近づいていく。料理を通して築かれていく夫婦の絆の描き方が温かく、見ていて優しい気持ちになる場面が多かったです。

 だが、物語が進むと、藩主の死によって「加賀騒動」と呼ばれるお家騒動が巻き起こる。政治的な陰謀が動き始め、城下には不穏な空気が広がる。主人公たちの平穏だった生活にも、じわじわとその影が及んでくる。物語の緊張感は増すが、その反面、事件の説明が多くなり、やや物語が停滞するような印象も受けました。

 そんな中で、夫は「包丁侍」としての役目を再確認する。血で問題を解決するのではなく、料理でもって人の心を解きほぐす。戦いではなくもてなしの心を通じて、加賀藩に再び明るさを取り戻そうとする姿勢が印象的だった。その目的のため、夫婦は一緒に旅へ出て各地の食文化を学びながら料理を研究していく。その様子もまた、穏やかで心が和む描写となっていました。

 個人的には、もう少し料理そのものに焦点を当てて、その工程や創意工夫などを詳しく描いてくれたら、より深く味わえる作品になったかもしれないと感じました。しかし、夫婦が手を取り合って料理に向き合い、信頼を深めていく姿にはとても温かさがあり、見終えたあとにやさしい気持ちが残る映画だったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2014/07/22 DVD

監督朝原雄三 
脚本柏田道夫 
山室有紀子 
朝原雄三 
出演上戸彩 
高良健吾 
西田敏行 
余貴美子 
夏川結衣 
緒形直人 
成海璃子 
柄本佑 
鹿賀丈史 
中村雅俊 
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