映画【アタック・ザ・ブロック】感想(ネタバレ):団地を守る少年たちの戦い

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●こんなお話

 ロンドンの団地で凶暴なエイリアンと戦う話。

●感想

 ロンドン南部の片隅。街灯の光が雨に滲み、団地の壁に黒い影を落としていた。
 夜勤を終えた看護師サマンサは、いつもの帰り道を歩いていた。疲労の残る足取りの先で、彼女は突然、少年たちに囲まれる。モーゼスを頭にした十代のギャングたち。財布を奪われ、アクセサリーを引きちぎられそうになるその瞬間、轟音が夜を裂いた。流れ星のような光が街区に落ち、爆音とともに車を直撃する。少年たちが興味本位で近づいたその車の中に、黒い影が潜んでいた。光る青い牙、闇に浮かぶ獣の輪郭。

 モーゼスたちは獣を仕留め、誇らしげにその死骸を担ぎ上げる。だが、それこそが彼らの“狩り”の始まりだった。
 やがて街区の空に、無数の流星が落ちる。次々と姿を現す黒い怪物たち。光を反射する青い牙が闇を駆け抜け、団地(ブロック)はたちまち戦場と化す。警察も、住民も、誰も助けに来ない。サマンサは、自分を襲った少年たちとともに閉ざされた建物の中に立てこもる。敵は外からも、そして内からも迫ってくる。

 彼らは懸命に金属バットや日本刀を手に、廊下を駆け、スクーターを走らせ、命を懸けた反撃に挑む。青い牙を光らせる怪物。やがて、麻薬王ハイ・ハッツもまたブロックに姿を現し、モーゼスを狙い、エイリアンだけでなく、人間同士の抗争も始まっていく。

 モーゼスたちは、紫外線ライトに浮かび上がるフェロモンの痕跡。それが、エイリアンを誘導する鍵だと気づく。最初の一体を倒したときについたその匂いが、モーゼス自身を“標的”としていた。彼は自らを囮にして、全てのエイリアンをおびき寄せ、爆竹で爆発を仕掛ける。夜を切り裂く光。炎の中でモーゼスはひとり飛び込み、ブロックを救う。

 夜が明ける。静まり返った団地の前で、警察が彼を拘束する。手錠をかけられたモーゼスを、住民たちが「モーゼス、ヒーローだ!」と声が上がっておしまい。


 本作は、南ロンドンの団地を舞台に、少年たちと宇宙からの侵略者との戦いを描く作品でした。冒頭からいきなり犯罪行為で始まるため、観る側としては主人公たちに共感しにくい導入でしたが、物語が進むにつれて彼らの生きる環境や置かれた現実が見えてきます。
 治安の悪さや格差の象徴としての団地、そこに閉じ込められたように暮らす少年たちの姿は、社会派ドラマのような重みを持っていました。彼らを“悪ガキ”ではなく、“居場所のない世代”として描くことなのかもしれません。

 隕石の落下から、エイリアンの襲撃、そして少年たちの反撃まで、テンポは軽快で、アクションの切り取り方もスタイリッシュでした。とくに、スクーターで夜の街を駆け抜ける映像や、青く光るエイリアンの牙のデザインなどは印象的で、低予算ながら創意が感じられます。少年たちがバットや日本刀で立ち向かう姿も痛快でした。

 一方で、ストーリー展開は王道のモンスター映画そのもので、大きな驚きは少なかったです。ギャングに憧れる少年たちの描写も、もう一歩踏み込んでほしかった印象です。ただ、それでも終盤、モーゼスが自らの罪や過去を抱えながら団地を守る姿には、確かなカタルシスがありました。
 エイリアンとの戦いを通して描かれる“責任”と“成長”の物語として観ると、静かな余韻を残す青春映画でもあります。

☆☆☆

鑑賞日:2012/12/25 DVD 2025/11/11 U-NEXT

監督ジョー・コーニッシュ 
脚本ジョー・コーニッシュ
出演ジョディ・ウィテカー 
ジョン・ボヤーガ 
アレックス・エスメイル 
フランツ・ドラメ 
リーオン・ジョーンズ 
サイモン・ハワード 
ニック・フロスト 
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