映画【バイオハザード ダムネーション】感想(ネタバレ):東欧の混迷と怪物が交錯する――アニメならではの圧巻バトル

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●こんなお話

 東欧でゾンビとかと戦う話。

●感想

  ソ連崩壊後の混迷の時代、東欧のある小国を舞台にアメリカの工作員である主人公が密かに潜入するところから物語は始まる。仲間と合流するはずの任務だったが、ようやく辿り着いた先には、重傷を負った味方の姿があり、すぐに異形の怪物に襲われるという状況へ巻き込まれていく。銃撃戦の末に何とか撃退した直後、今度は反政府勢力に捕らえられ、さらにその拠点が政府軍の襲撃を受けたことで、否応なく反政府軍と行動を共にすることになる。

 その一方で、大統領周辺には怪しい陰謀の影がちらつき。主人公はアメリカに憧れる若者とともにゾンビのような凶暴化した人間から逃げ回りながら、反政府勢力の本拠地へ向かうことになる。しかし、若者は途中で感染し、やがて正気を失ってしまう。主人公は仲間としての情を抱きつつ、彼に引導を渡さざるを得なくなる。

 反政府側は、怪物を操作できる技術を奪っており、それを使って政府中枢への反撃を試みる。だが、大統領側もそれを上回る強大なクリーチャーを投入してきて、怪物同士の衝突という異様な戦場が広がっていく。主人公たちは地下施設を突破し、地上へと逃げ延びるが、なおもクリーチャーが追ってくる。戦車で立ち向かうなど、まるでゲームのボス戦のような激しい戦闘が続く。最終的にはアメリカ軍とロシア軍が合同で介入し、政権へ攻撃を加えるという国際的な展開へと突入しておしまい。

 アニメならではの派手なカメラワークや、CGによるキャラクターたちの流麗なアクションはとても魅力的で、スローモーションを駆使した演出や重厚な音響なども手伝って、視覚的に楽しませてくれるシーンが多かったです。特に、怪物を味方として共闘する場面や、無表情な巨人のようなクリーチャーが明るい空の下で突進してくるカットなどは、映画ならではのスケール感があって印象に残りました。

 ただ、全体的にはゲームのファンであればすぐに理解できる設定が多く、作品単体で見てしまうと、導入部分から少し戸惑う場面が多かったように感じました。主人公の背景や、反政府組織と政府軍の対立構造、さらにはゾンビ化する人々の存在など、かなり多くの情報が一気に投げ込まれてくるため、最初の30分ほどは物語に入り込むまで時間がかかる印象でした。

 途中で登場する中国系の工作員のようなキャラクターも唐突に現れ、何を目指して動いているのかはっきりせず、主人公をピンチで助けたり、どこか峰不二子的な雰囲気で神出鬼没に登場するだけに、もう少し背景が語られていたら良かったと思います。反政府組織のリーダー格の人物も、主人公に襲いかかったかと思えば共闘したりと、信頼関係の軸が曖昧で、動機に納得しにくい構成でした。

 また、女性の大統領がとても戦闘能力の高い人物として描かれており、それ自体は面白く、どういう経緯で彼女があのような強さを手に入れたのか、作品外の前日譚などがあるならぜひ知りたいと思いました。

 全体としては、重厚な世界観と政治色の強いストーリーライン、そして異形の存在とのバトルをミックスした構成が特徴的で、映像的な迫力とアニメならではの表現力は見どころが多く、エンタメとしてしっかり作り込まれた印象でした。物語のディテールを完全に理解するにはゲームの知識が必要かもしれませんが、アクションや映像美を味わうという点では十分に満足できる内容だったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2012/10/24 TOHOシネマズ府中 2021/06/07 NETFLIX 2025/06/25 Amazonプライム・ビデオ

監督神谷誠 
脚本菅正太郎 
出演(声)マシュー・マーサー 
デイヴ・ウィッテンバーグ 
コートニー・テイラー 
ヴァル・タッソー 
ロビン・サックス 
ウェンディー・リー 
サリー・サフィオッティ 
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