映画【サイン】感想(ネタバレ):信仰を失った父が異変の中で見つけた答え

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●こんなお話

 アメリカの片田舎で宇宙人侵略をきっかけに家族再生する話。

●感想

 半年前まで牧師だった主人公は、今は信仰を捨て、弟と2人の子どもと一緒に田舎の家で静かに暮らしている。そんなある日、家の近くに謎のミステリーサークルが現れ、「誰がこんなことを?」という疑問から物語は始まって。

 さらに、飼い犬が突然凶暴化するなど、家の周辺では異変が続発。テレビでは、世界中で不可解な超常現象が報道されるようになり、UFOや宇宙人の目撃情報まで飛び交うように。主人公は街で買い物に出かけると、以前の牧師という立場で声をかけられ続け、それに「もうやめたんです」と応えるのも煩わしく感じている様子。

 ある夜、家に侵入者が現れたような気配があり、主人公と弟で追いかけるものの正体は掴めず、警察に相談してもあまり真剣には取り合ってもらえない。そんな中、テレビで宇宙人が実際に撮影された映像が流れ、子どもたちが読んでいる宇宙人の本の内容と現実の状況が一致していることが明らかになっていく。

 主人公は、かつて妻を交通事故で亡くした過去を抱えており、事故の加害者の家を訪れると、その家の地下室に宇宙人らしき存在を閉じ込めていると告げられて。中に入ると襲われそうになり、間一髪で逃げ出すという出来事もあったり。

 家族で避難するか、家に籠るかを話し合った結果、籠城を選択。家中の窓やドアに木の板を打ちつけ、宇宙人の接近に備えます。やがて宇宙人が家にやってきて、地下室に逃げ込むことに。そこでも問題が起き、息子の喘息の薬が切れてしまう。

 夜が明け、外の様子を見に行ったところ、宇宙人がまだいたことが判明し、息子が捕まってしまいます。追い詰められた状況の中、主人公は妻が亡くなる前に語った最後の言葉を思い出し、それをきっかけに弟に「バットで打て」と伝えます。弟は元マイナーリーグの選手で、宇宙人に向かってフルスイング。さらに、家中に娘が無意識に置いていた水が、宇宙人の弱点であることが発覚し、水によって宇宙人を倒す。

 そして、喘息を持つ息子は、気道が塞がっていたおかげで宇宙人の毒ガスのような攻撃を吸わずに済み、奇跡的に助かり、家族は命をつなぎ、おしまい。

 牧師としての信仰も、愛する妻も失っていた主人公が、異常事態を通じて「生きる意味」を見出すまでの過程が、物語の核となっています。ラストで明かされる妻の最後の言葉によって、全体のテーマが集約され、「意味がなかった人生」が「意味を持つ人生」へと転換されていく流れは感動的でした。

 ジェームズ・ニュートン・ハワードによる音楽は、静かな場面でも緊張感を保ち、映画全体の空気をぐっと引き締めてくれます。映像も美しく、特に正面や真横からの90度のカメラワークが印象的で、撮影監督タク・フジモトの演出が光ります。

 一方で、物語の序盤から異変が起こってしまうため、主人公が家族にどのような感情を持っているのかがやや分かりにくい点も。宇宙人に襲われた際の家族への語りかけは感動的な描写ですが、もう少し日常の描写があれば感情移入しやすかったかもしれません。また、籠城戦という展開がジョージ・A・ロメロのゾンビ映画のようでやや唐突だったり、伏線の扱いもやや雑で、娘が水を集める行動や弟の野球の過去が「たまたま」重要になってしまうのもご都合主義的に見えるところがあります。

 ただ、それも含めて、観る人に「偶然とは何か?」「意味とは何か?」と考えさせる仕掛けなのかもと考えたりで。信仰を失った男が、再び何かを信じるまでの物語として見ると、非常に深く味わえる一本です。

☆☆☆☆

鑑賞日:2013/02/20 Hulu 2024/01/30 Disney+

監督M・ナイト・シャマラン 
脚本M・ナイト・シャマラン 
出演メル・ギブソン 
ホアキン・フェニックス 
ロリー・カルキン 
アビゲイル・ブレスリン 
チェリー・ジョーンズ 
M・ナイト・シャマラン
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