●こんなお話
女子大生が魔境に足を踏み入れて恐怖体験する話。
●感想
恋人の浮気によって心に深い傷を負った女子大生・しよりが、親友の愛子に誘われ、人里離れた山奥の温泉地・阿鹿里村へと傷心旅行に訪れるところから始まる。都会の喧騒から隔絶されたその村は、豊かな自然に囲まれた静かな場所に見え、二人はしばし現実を忘れようとする。
しかし到着早々、しよりと愛子は些細な言い争いをきっかけに気まずくなり、感情のすれ違いから別行動を取ることになる。この小さな亀裂が、後に二人を極限状況へと追い込む引き金となる。
夜になり、しよりが一人で滞在先の小屋へ戻ると、突然携帯電話に見知らぬ男から「今すぐ逃げなければ足を切り落とされる」という不気味な警告が入る。あまりにも突飛な内容に、しよりは悪質な冗談か何かだと疑うが、その直後、村人たちの様子が明らかにおかしいことに気づく。
彼らは無表情で、どこか狂気を帯びた視線を向け、しよりに対して敵意を隠そうとしない。異変を察したしよりは小屋を飛び出し、恐怖に駆られながら山中を必死に逃げ回る。携帯電話で愛子や外部の知人に助けを求めるものの、電波は不安定で、連絡は断続的にしかつながらない。
一方その頃、愛子の側でも異常事態が進行していた。村人たちは次第に正体を現し、さらに巨大なハサミを持った謎の女レイカが現れて、執拗な追跡と襲撃を繰り返す。愛子は抵抗しながら逃げ続けるが、村全体が外部の人間を排除しようとする狂気に包まれていることを悟る。
やがてしよりは、東京から彼女を追ってきた元恋人・朝宮圭一と接触するが、彼の言動はどこか歯切れが悪く、阿鹿里村に隠された真実についても核心を語ろうとしない。その曖昧な態度は、しよりの不安をさらに増幅させる。
さらに、謎の電話の主から断片的な情報がもたらされ、この村には古くから若い女性の左脚を神に捧げるという狂信的な儀式が存在し、しよりと愛子はその生贄として選ばれていた可能性が浮かび上がる。
村人たちは儀式の準備を着々と進め、逃げ場は次第に失われていく。しよりと愛子は互いに連絡を取り合いながら合流を目指すが、時間軸が交錯するように描かれる中で、二人はそれぞれ別の恐怖と対峙し、次々と追い詰められていく。
ついにしよりは捕らえられ、儀式の場で縛り上げられ、左脚を切断されそうになる絶体絶命の状況に陥る。しかし間一髪のところで愛子が駆けつけ、さらにはレイカも乱入。必死の抵抗の末にしよりを救出する。
その混乱の中、これまで電話越しに警告を発していた男・物部昭が車で儀式の場へ突入し、村は大混乱に陥る。その隙を突き、しよりと愛子は命からがら阿鹿里村を脱出することに成功する。
こうして二人は狂気と因習に支配された魔境から生還を果たしておしまい。
怪しい山村の温泉に女性二人がやって来る導入から、すでに不穏な空気が漂っておりますが、ペンションのような宿でいきなり登場するドリフのコントを思わせるおばあちゃんには、思わず笑ってしまいました。この時点で、ただの正統派ホラーではないことを察します。
やがて村人たちが襲いかかり、捕まると足を斬られるという恐ろしい風習が明らかになる展開は、設定として非常に強烈でした。一人が必死に逃げ回る一方、もう一人は奪われた男の元恋人であるゴスロリファッションの女性に巨大なハサミで襲われるという、理解が追いつかない流れが続きます。最初は白い服だった彼女が、燃やされたあとに現れると全身真っ黒になっているのとかは笑えてよかったです。
トイレに閉じ込められ、無惨な目に遭った主人公が、そこから出てきた途端に覚醒したかのようにチェーンソーを手に戦い始める場面も、理屈は分かりませんが、絵面の強さで押し切られてしまいます。人里離れた村のはずが、いつの間にか普通の工事現場のような場所で戦っている点も含め、勢いを楽しむ作品だと感じました。
クライマックスで捕まった仲間を救うため、主人公が選んだ武器が携帯電話のフラッシュという発想も印象的でした。それに戸惑う村人たちの反応を見ると、この人々は文明社会から完全に切り離された存在なのだと妙に納得してしまいます。そこへ再び乱入するハサミのゴスロリ女性を加えた三つ巴の戦いは、混沌としていて本作屈指の見どころでした。
ただし、二人の主人公が同じ時間軸を行き来する構成については、物語上どこまで効果的だったのか疑問が残りました。緊張感を高める狙いは感じられるものの、結果的には混乱を招いてしまい、一本の流れで描いたほうが分かりやすかったのではないかとも思いました。それでも、この作品ならではの奇妙な魅力と勢いは確かにあり、忘れがたい一本であることは間違いありません。
☆☆☆
鑑賞日:2013/03/09 DVD 2026/01/07 U-NEXT
| 監督 | 深作健太 |
|---|---|
| 脚本 | 大石哲也 |
| 原作 | 上甲宣之 |
| 出演 | 松下奈緒 |
|---|---|
| 鈴木亜美 | |
| 中川翔子 | |
| 森下能幸 | |
| 神威杏次 | |
| 仁科貴 | |
| 岩根あゆこ | |
| 岩尾望 | |
| 小沢真珠 | |
| 池内博之 | |
| 小山力也 |


