映画【ソウルの春】感想(ネタバレ):韓国近代史の転換点を描く緊迫の政治ドラマ

12.12:THE DAY
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●こんなお話

 全斗煥の粛軍クーデターの話。

●感想

 1979年、朴正煕大統領が暗殺された後、その暗殺事件を捜査する本部長に就任したのが全斗煥。彼は軍内において「ハナ会」という組織を築き上げ、少しずつ権力を掌握していきます。

 一方で、全斗煥の台頭を快く思わない軍の上層部も存在しており、参謀総長は全斗煥を抑えるために、首都防衛司令官として主人公を任命します。このような中、ハナ会によるクーデターの計画が密かに進行していく。作戦に対して迷いや戸惑いを見せる者もいる中で、全斗煥は軍人たちを結集させ、ついに1979年12月12日、クーデターが開始されます。

 全斗煥たちは参謀総長を拘束し、大統領にその逮捕を正式に認可させようとしますが、大統領はなかなか首を縦に振らない。その間に事態は悪化し、参謀総長の誘拐は銃撃戦にまで発展。混乱は拡大の一途をたどります。

 全斗煥自身も大統領府に一時拘束されそうになりますが、そこからの逃走劇も描かれ、さらにハナ会のメンバーが各地に電話をかけ、軍内部で「どちらの側につくべきか」と迷う兵士たちの姿も描かれます。

 クーデター側とそれを討伐しようとする側のどちらが先にソウルに進軍するのかを巡る駆け引きは非常にスリリングで、緊張感を持って見守ることができました。主人公の上官たちの無能ぶりが明らかになる中で、討伐側が徐々に追い詰められていく構図は、実際の歴史を知っていても手に汗握る展開。最終的には国防長官が登場し、「錦の御旗」としての存在感を放つ展開もあり、物語に重厚さを加えています。

 映画はクーデター当日の数時間を中心に描いており、時系列がテロップで丁寧に示されるため、歴史をもとにした作品であるにもかかわらず、結末がわかっていてもどちらが勝つのか最後まで緊張感を持って楽しむことができました。

 序盤は登場人物が多く、誰が誰なのかを把握するまでやや混乱しましたが、クーデターが始まってからは物語の流れに一気に引き込まれました。1980年の韓国にこのような激動の歴史があったのかと、映画を通して学びながら観ることができたのはとても貴重な経験でした。

 一方で、わかりやすさを重視した演出のためか、一部の軍人が極端に無能かつ頭の悪い人物として描かれていた点は、ややステレオタイプに感じられる部分もありました。しかしながら、主人公たちの存在を際立たせるための手法として考えれば、ある程度は仕方のない表現だったのかもしれません。

 本作は、近代史における重大な瞬間をエンタメとして臨場感たっぷりに描いた政治サスペンスであり、多くの観客にとって「知るべき歴史」を強烈な形で伝えてくれる作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2024/09/02 イオンシネマ海老名

監督キム・ソンス 
脚本ホン・ウォンチャン 
イ・ヨンジュン 
キム・ソンス 
出演ファン・ジョンミン 
チョン・ウソン 
イ・ソンミン 
パク・ヘジュン 
キム・ソンギュン 
チョン・マンシク 
チョン・ヘイン 
イ・ジュニョク 
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