映画【前科者】感想(ネタバレ):保護司と仮釈放青年の心の交流と事件の真実

Zenkamono
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●こんなお話

 保護司の主人公が殺人の前科を持つ青年がバイオレンスな道に戻っちゃうかもと奮闘する話。

●感想

 海辺で寝転がる2人の学生がキスを交わす静かなシーンから始まり。そこから場面は一転、主人公がコンビニでバイトをしている日常へと移る。彼はその傍ら、仮釈放中の人々と面談を行う保護司としても活動している。ツケで買い物をして逃げた利用者の代金を肩代わりする羽目になるなど、トラブル続きの毎日。しかもその保護司の仕事は無報酬であることがテロップで紹介され、冒頭はまるで保護司の仕事紹介ムービーのようにテンポよく進んでいって。そこが妙にリアルで面白く、観ていて引き込まれるものでした。

 その中で、自動車整備工として働く青年との面談が描かれる。かつて職場で先輩から酷いいじめを受け、反撃する形で殺人を犯してしまったという過去を持つ。現在はまじめに仕事に取り組み、仮釈放の期間も終わりが見えてきていた。

 しかし、ある日その青年の前に銀髪の青年が現れる。ちょうど同じ頃、街では警察官の拳銃が強奪され、それを使った銃撃事件が発生。警察による捜査の様子が並行して描かれ、物語は一気にサスペンス色を強めていきます。

 やがて仮釈放中の青年とこの銃撃事件との関係性が明らかになっていく。青年と銀髪の青年は兄弟のような関係で、かつて実母を殺された過去を共有していた。そして今回のターゲットは、かつての事件の際に彼らを守ってくれなかった大人たち——警官、役所の職員、養護施設の職員、義理の父親など。事件の背後には、彼らの壮絶な生い立ちと、無力だった周囲の大人たちへの怒りがあり。

 主人公は義理の父親を訪ねて過去の話を聞きますが、そのタイミングで兄弟が襲撃。警察もすでに張り込んでおり、銃撃戦のようなシーンに突入する。負傷した青年は弁護士を呼ぶが、実はその弁護士も彼らのターゲットのひとりだったことが判明。主人公は彼を止めようとし、自らが保護司になった理由を語る。過去に向き合い、苦しむ人を救いたいという主人公の真剣な思いが青年に届き、物語は感情的なクライマックス。

 劣悪な環境や理不尽な社会に翻弄される若者たちの姿が重く胸に響く一方で、エンタメとしての緊張感と物語の進行テンポもよく、最後まで引き込まれる1本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2022/06/28 Amazonプライム・ビデオ

監督岸善幸 
脚本岸善幸 
原作香川まさひと
月島冬二
出演有村架純 
磯村勇斗 
若葉竜也 
マキタスポーツ 
石橋静河 
北村有起哉 
宇野祥平 
リリー・フランキー 
木村多江 
森田剛 
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