●こんなお話
久しぶりに実家に帰ったら謎の生物に襲われて自分も感染してどんどん変わっていってしまう話。
●感想
「ヒル・フィーバー」と呼ばれる感染症とネイティブアメリカンに伝わる狼男伝承を説明するテロップから始まる。山間部では原因不明の失踪事件が続き、野生動物とも異なる痕跡が報告されていることが示される。
ブレイク・ラヴェルはサンフランシスコで妻シャーロット、娘ジンジャーと暮らしている。ある日、長年疎遠だった父グレイディの死亡証明書と、オレゴン州の山奥にある実家の鍵が届く。父は長く行方不明とされていた。夫婦関係に距離が生まれていたブレイクは、家族関係を立て直す機会として、父の家を整理するためオレゴンへ向かうことを提案する。
一家が森へと続く道路を走行中、夜道の前方に異様な影が現れる。車は急停止し、その直後に獣のような存在が車体に体当たりする。ブレイクはハンドルを切って辛うじて逃げ、父の農場へ駆け込む。日没後の森からは遠吠えとも唸り声ともつかない音が響き、家の周囲を何かが徘徊する。ブレイクは窓や扉に板を打ちつけ、即席のバリケードを作る。夜半、傷口は異様な速度で変質し、熱と悪寒に襲われる。
時間の経過とともにブレイクの身体に異変が起きる。指先の爪が硬質化し、歯が伸び、聴覚と嗅覚が異常に研ぎ澄まされる。瞳孔が拡張し、暗闇でも輪郭がはっきり見えるようになる。理性を保とうとするが、獣の血の匂いに強く反応し、衝動的な行動を抑えきれなくなる。
再び襲来した怪物と対峙したブレイク。倒れた怪物の背中に刻まれた軍隊の入れ墨を見て、それが父グレイディであると気づく。父もまた同じ感染により変異していた。父は完全に獣化し、言葉を発することなく息絶える。
感染は止まらず、ブレイクの身体は急速に変貌していく。シャーロットは娘を連れて納屋へ逃げる。ブレイクは本能に突き動かされ追跡するが、罠に足を挟まれ骨が露出する。苦痛を感じないまま罠を引きちぎり、その衝撃でさらに変異が進む。
夜明け前、納屋で対峙したシャーロットは、もはや言葉も通じない姿となった夫に銃を向ける。ブレイクは、家族を見つめる。シャーロットは引き金を引き、銃弾は胸を貫く。倒れたブレイクは、幼い頃に父と見た谷の風景を思い出しながら息絶える。
朝日が差し込む中、シャーロットとジンジャーは農場を後にし、森を抜けて歩き出しておしまい。
リー・ワネル監督らしい身体変容ホラーとしての演出は丁寧で、家族劇を軸にした構造も明確でした。とくに、理性が徐々に削られていく過程を台詞よりも肉体の変化で見せる演出は好みです。言葉数を抑え、呼吸や動作、視線で恐怖を描く姿勢は評価できます。
一方で、画面全体が暗く、細部の動きが判別しづらい場面が続いた点は気になりました。狼男の特殊メイクは堅実ではあるものの、強烈なインパクトというよりは現実寄りの質感に寄せた印象です。そのため驚きよりも静かな観察に近い感覚で見守る形になりました。
父が怪物へ変わり、娘がそれを見届ける構図には確かに悲劇性がありますが、感情の爆発というよりは淡々と進行します。抑制されたトーンを好む方には響く作風ですが、大きな起伏を期待すると物足りなさを感じる可能性があります。
全体としては、派手なホラーではなく、家族の崩壊と変異を静かに描く作品という印象でした。アクション主体の肉体表現を楽しみたい方には一定の満足感がある一方、盛り上がりを求めると評価が分かれる一本です。
☆☆☆
鑑賞日:2026/02/23 Amazonプライム・ビデオ
| 監督 | リー・ワネル |
|---|---|
| 脚本 | レベッカ・アンジェロ |
| ローレン・シューカー・ブラム | |
| コルベット・タック | |
| リー・ワネル |
| 出演 | ジュリア・ガーナー |
|---|---|
| クリストファー・アボット | |
| マチルダ・ファース | |
| サム・ジェーガー | |
| ベネディクト・ハーディ |

